課外型PBLの成果物を活用した反転授業の試み

関東学院大学 法学部 道幸俊也

与えられたテーマから学生たちが問題意識をもって取り組むPBL型課外活動で、学生視点で作成した成果物を活用した反転学習で学生たちは何を学び、何を身につけるのか?また、そのようなアクティブラーニングを実践し、活動や授業を運営していく教員にとって、どのような課題があり、どのような立ち位置にいることが効果的なのかを探る。

 

対象となる実践(授業)について

〇PBL型課外活動「KGUキャリアch」

複数学部の学生をチームとし、企業に対して学生たちで考えたテーマについて、企業を選択し動画取材を学生が交渉する。交渉の結果、了承された場合、取材の説明・取材の日時などを決めて、実施する。取材内容の構成は主に法学部の学生、取材した内容の編集は工学部の学生が担当する、等個々の学部で学んでいる専門性を役割意識をもって活かすよう教員は働きかける。その取材動画を編集したVTRをWebサービス「Ustream」にて生放送し、学生にチャット等で参加してもらいインタラクティブな放送作りを実施する。取材して編集するVTRは、あくまでも学生視点で「学生版ガイヤの夜明け」を目指すように指導している。

〇「KGUキャリアch」成果物のICT活用した反転授業

上記の活動で得られた成果のVTRをキャリア支援系科目において、その授業回のテーマに即した内容を活用する。具体的には、「社会を知る」というテーマの科目において、取材編集VTRを事前学習としてWebで視聴し、教員が提示した課題に取組み、授業にそのアウトプットを持参して参加する。授業では、あるテーマの教材を提示し、持参したアウトプットを共有しながらグループワークでディスカッションする。そして、グループの考えや意見を付箋紙を使い、カードソート法で整理しながらまとめて、模造紙に自分たちの意見や考えを自由に表現する。この内容をクラス全員が共有できるようにクロスグループインタビュー(ポスターツアー)式で共有し、主体性やチームワークを醸成する。

 

法学部キャリア形成基礎1

目標:様々な業界の働き方や特徴を知る・学ぶことから今後のキャリアにおけるイメージを描き、進路選択の指針とする

 

法学部キャリア形成発展1

目標:環境分析の方法を理解し、その元になる情報収集、特に社会人インタビューをすることで今後社会人になってから、どのようなことを意識して仕事に取り組むのか、また、エンプロイヤビリティやポータブルスキルの概念を理解する。

 

上記2つの科目において、

それぞれ課外型PBLの成果物としてのVTRを事前学習として視聴し、取り組んだ課題を授業に持参する。

授業内でさらに提示されたテーマについてグループでディスカッションし、自分たちの考えや意見を模造紙に表現する

その模造紙をもとにして、ポスターツアー形式で全体共有する。

 

プロジェクトの動機

本学の改革推進事業(今年度終了)に採択され、学生たちによる学生視線で「企業を知る、社会を知る」というテーマから主体的行動の意味やチームワークの重要性を活動を通じて体感しながら学ぶ機会や場を設けたいという背景があった。というのも、ややもすれば形骸化してしまいがちなキャリアデザインの授業内容を打破したいという思いがあった。

また現在、大学で教壇に立つ以外に企業でキャリア開発研修などを担当している。そのいくつかの研修を実施する際、依頼側である「人事関連部署」からの生の声として、メディア等で発表、あるいは報じられている様々な統計のように「主体性」「積極性」が若手社員に求められていることが実際によく聞くことがある。

そうした中で専門性を学び、それを実際に活かす汎用的能力が身についていないと、社会に出てからもやりがいや充実感につながらないのではないかと感じている。また、同時に学生自身が学んだことをどのように活かしていけば良いのか、具体的なイメージができていないケースが本学の場合は非常に多く、「学ぶ」ことへの意欲や動機付けができていない。しかし、実際に取り組んだ学生たちから意欲的な本質を突くような発言も出てきている。

一方で、法学部におけるアクティブラーニングの進捗が進まない中で、このような授業取り組みをすることの有益性があるのか、という観点も見過ごすことはできない。社会に出ていくとアクティブラーニングのようにチームで活動する、自ら主体的に活動することを求められることは前述どおりで、学生時代から慣れ親しんでおくことやアクティブラーニングの取り組みから自身の課題を明確にしておくことも重要となってくる。

これらのことから本学の法学部におけるアクティブラーニングを展開する上での実践上の課題を明確化していきたい。

プロジェクトの目標

1.PBL型活動、とりわけ正課外の場合、学生は何を学び、何を身につけるのか?一方で、取り組むにあたって阻害要因となったことは、どのようなことがあったのか?

2.その成果物を活用するキャリア支援系科目内で実施する反転授業から学生の取り組み姿勢において、どのような変化がもたらされるのか?

3.法学部におけるアクティブラーニングの有益性として実施の意義があるのか?

これらの要因を明確化し、教員の立場として今後実践する上での課題を明らかにする。

 法学部キャリア形成基礎1(1年生)

授業内で取り組んだ模造紙(抜粋)

 

授業の方法とその有益性に関する調査および結果考察について

①PBL型課外活動「KGUキャリアch」における学生の動機分析

今年度は現在進行中の活動を含めて2つの取り組みが計画されている。Ustreamによる放送後のタイミングで実施する。

また、昨年度、実施した取り組みにおいても同様に実施するが、新4年生ということもあり就職活動時期となったため

ヒヤリング時期は進路決定後とする。

1.参加した学生と個別面談を実施する。社会人基礎力の12の要素において取り組みの前後での変化についてヒヤリングする。

2.ヒヤリング内容から質的調査を実施する。

②「KGUキャリアch」成果物のICT活用によつ反転授業

本学部「法学部キャリア形成基礎1」(秋学期、水曜日4限目)「法学部キャリア形成発展1」(秋学期・水曜日2限目)において、当該授業を取り入れる。

 

・「法学部キャリア形成基礎1」:履修者数 89名

テーマ:多様な働き方を知ることで、今後のキャリアのイメージや進路選択を考える

各業界から外部講師にご登壇いただき、その業界の特徴や働き方を学ぶ

その途中の回において、反転授業を導入した。内容は、「育児休暇制度について考える」

ユーコープ神奈川へ「育児休暇制度を活用して現場復帰した女性社員の方へのインタビュー」を実施し、その取材内容を編集したVTRを事前学習の課題として視聴し、課題に取り組ませた。

その課題を授業に持参し、授業内で提示したテーマについてグループに分かれてディスカッションし、グループの意見や考えを模造紙に自由に表現させた。

その模造紙をもとにして、ポスターツアー形式で全体共有した。

 

・「法学部キャリア形成発展1」:履修者数 53名

テーマ:環境分析することの意味、エンプロイヤビリティとポータブルスキルを理解する

社会人インタビューを3回連続で実施することで、情報収集することの重要性と必要性を学ぶ

この社会人インタビューを実施する前に反転授業を導入した。内容は「本牧ビルサービス」へ取材した内容を編集したVTRを事前学習として視聴し課題に取り組ませた。

その課題を授業に持参し、授業内て提示したテーマについてグループに分かれてディスカッションし、グループの意見や考えを模造紙に自由に表現させた。

その模造紙をもとにして、ポスターツアー形式で全体共有した。

 

〇調査について

①.について、ヒヤリングの実施が就職活動などにより時間的な都合が取れず、今回は調査せず。

②.については以下のとおり。

■質問紙の作成

・試験的導入から質問紙の項目の作成について

ICTを活用したVTRは科目「法学部キャリア形成基礎2」の中で「ダイバーシティ」について学ぶ回に試験的に導入した。その授業後、このような取り組みに対する気づきや感想について自由記述でリフレクションペーパーに書かれたものから、共通性のある文言等を抽出して質問項目(質問A)とした。ただし、概念妥当性についての検証はしていない。

・学びに対する深度、ラーニング・ブリッジ(河井、溝上、2012)について

当該授業の取り組みから、どのような学びがあり、その学びに有益性があったかどうかを調査するために、「学習を架橋するラーニング・ブリッジについての分析-学習アプローチ、将来と日常の接続との関連に着目して」(河井、溝上、2012)に記載されている質問項目(質問B)が有効と考え採用した。

上記の質問項目から構成された質問紙について「このような課外型PBLのVTRを活用した反転授業について回等してください」という教示文を提示し、授業の実施後に回答させた。

 

■分析

上記の質問紙の回答結果から、因子分析(主因子法、Kaiserの正規化を伴うプロマックス回転、8回の反復について収束)を実施。サンプル数は欠損値を含むデータを除き、固有値の変化量と因子の解釈の可能性から該当する5つの質問項目を除いた。

 

■結果 因子分析パターン行列.pdf

下記の4つの因子を抽出した(分散累積率52.3%)

・積極的発展的学習態度(質問A:9項目、質問B:13項目、内的整合性:.936、M=3.87 SD=0.72)

・授業取組内容(質問A:12項目、内的整合性:.919,M=4.30 SD=0.85)

・浅い学び(質問A:7項目、内的整合性:.855,M=3.33 SD=0.89)

・ラーニング・ブリッジ(質問A:1項目、質問B:4項目、内的整合性:.850、M=4.15 SD=0.75)

 

相関(Pearsonの相関係数)

 

積極的発展的

学習態度

授業取組内容

浅い学び

ラーニング・

ブリッジ

積極的発展的学習態度

.539** -.256* .636**
授業取組内容   -.034 .426**
浅い学び     -.248*

ラーニング・

ブリッジ

     

 また、1年生と2年生における差異についてt検定を行ってみたところ、有意な差異は認められなかった。ただし、ラーニング・ブリッジについては、p<5%付近において1年生の方が高いことが可能性として示唆されている。

■考察と含意

今回の授業取組(課外型PBLの成果物を活用した反転授業)が学生たちの積極性や更なる発展的な学習態度とラーニング・ブリッジと有意に正の相関があることが認められた。 このことから、法学部生におけるアクティブラーニング形式の授業取り組みの有益性はあると考えられ、継続的に実施していくことで社会人としてチームで活動してく上での汎用力を向上すること、一方で自身の課題も明確になっていくかもしれない。今回は3年次、4年次における調査を実施していないため、十分とはいえない。今後の課題として各学年ごとでの差異に対して、さらにPre-Postでの調査からも検討する必要性があると考える。

また、PBL活動に参加した学生から正式なヒヤリングは実施できなかったが、活動途中における諸問題は発生している。特にメンバー間におけるコミュニケーション(学部間によってキャンパスが異なるという物理的な障害)から意思決定に時間がかかってしまったことへの学生たちの葛藤は大きいことが分かっている。このような困難な状況から目標を達成するというレジリエンスを醸成できる場としてのPBL活動の意義についても考えていく必要がある。

 

PBL型課外活動における成果物

これまでの活動をVTRにまとめた映像です。

※著作権の関係上、Youtubeでは非公開としておりますので、検索できないようになっております。こちらからのみご覧いただけるようにしておりますこと、ご了承くださいますようお願い申し上げます。

 

〇2014年10月一般公開生放送をUstreamで実施したときに使用した取材VTR

1.日立ソリューションズ・ダイバーシティ推進センタ長 小嶋美代子氏への取材インタビュー

https://youtu.be/psr9eI6iTKw

 

(今回の取組内容をもとに一般公開講座を開催)

 

2.日立ソリューションズ・ワークショップ

この取材番組のコンセプト作りをワークショップを通して考える

その流れの中に「ダイバーシティ」があり、更に「ダイバーシティマネジメント」へ。

アクティブラーニングのひとつの形が描かれている。

https://youtu.be/NV9e72VwVbQ

 

〇ユーコープ神奈川「女性の働き方」

 育児休暇制度を活用したのち、現場に復帰された女性社員の方へのインタビュー

また、当該企業におけるキャリア開発について。

 https://youtu.be/xgcHYcuNEIQ

 

(人事部 河澄様、橋田様へのインタビュー模様)

 

〇本牧ビルサービス「会社紹介」

当該企業の事業内容、企業理念、また、営業職の方への同行取材。

企業へ取材することのポイントを理解する

 https://youtu.be/8IVI-7vfHde

 (代表取締役 鳥海様へのインタビュー模様)

 

〇日立ソリューションズ「イクメン、イクボス」

育児休暇制度を活用した男性社員へのインタビュー(2015年12月)を実施。

現在、編集中となっている。

 

 (日立ソリューションズ横浜支社にて)

 

その他、就職活動向けの「個別面接編」「集団面接編」「グループディスカッション編」「自己PR作成編」「志望動機作成編」などを制作し、必要に応じて視聴する場を設けている。

協力者・ピアレビューについて

 

MOSTの先生方、本学・本学部の教職員の方たちから、

〇ICT活用のVTR内容について

・内容は適当か(内容妥当性・具体性、理解難易度)

・VTRの時間の長さは適当か。長すぎると視聴を諦める、もしくは、飽きてしまうことも考えられる

 

〇反転授業(Flipped Class)の実施方法について

・反転授業を履修している学生が課外型PBLに参加していたら、良かったのではないだろうか。

 

 

 

資料・文献

・立命館大学におけるコーオプ教育手法と評価研究(Ⅰ論文・研究の部)年報、(11)、pp.17-23(2008-06-20)

・松高政、大学の教育力としてのキャリア教育:京都産業大学におけるパネル調査分析から 京都産業大学論集 社会科学系列、25、pp.145-168(2008-03)

・見舘好隆、永井正洋、北澤武、上野淳(2008)大学生の学習意欲、大学生活の満足度を規定する要因について、日本教育工学会論文誌、32(2)、pp.189-196

・河井亨、溝上慎一、学習を架橋するラーニング・ブリッジについての分析ー学習アプローチ、将来と日常の接続との関連に着目して、日本教育工学会論文誌、36(3)、pp,217-226

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