教職への歩みに確かにするための初年次教育の構築

今 正秀 (奈良教育大学)

 

概要:奈良教育大学では、高度な専門的職業人としての教員・教育者の育成を果たすため、学部改組を行ってきた。2012年度には、教員としての活動の中核をなす指導力や課題への対応力の醸成を可能にするために、カリキュラムの見直しを行い、その導入に位置する初年次教育の一層の充実を図った。本稿では、初年次教育として新たに設定された4つの授業(「大学での学び入門」「教職入門」「現代教師論」「専修基礎ゼミ」)の内容や実施体制について紹介を行い、旧カリキュラムとの変更点や取り組みの成果について報告する。

キーワード:初年次教育、教員養成、新カリキュラム、学部改組、全学的取り組み

奈良教育大学
奈良教育大学のウェブサイト

奈良教育大学広報誌「ならやま」2012春号
学部改組と新カリキュラム施行にあたっての説明

【取り組みの背景】

 奈良教育大学(以下、本学)は、これまでも社会の要請に応え、高度な専門的職業人としての教員・教育者の育成を果たすため、学部改組を行ってきた。

 今回の改組では学部定員のすべてを教員養成課程とし、教育発達・教科教育・伝統文化教育の3つの専攻を設けた。それぞれ独自の専門の学びを深めながら、教員の中核をなす教科指導力、児童・生徒の成長を促すために欠かせない教育臨床的力、そして直面するさまざまな課題への対応力を高める教員養成をめざしている。

 それを可能にするために、教員養成カリキュラムの全体についても大幅な見直しを行い、導入教育としての「初年次教育」の一層の充実を図ることとした。

取り組みの位置づけ

  本学へ入学する学生は、教員への強い志望をもっている。その意味では、卒業後の進路、つまり自身の将来設計が明確であり、従って何を学ぶべきかもはっきりしており、学ぶ意欲も高いといえる。

 そうした特徴を活かしながら、入学後の学びを円滑に進めるためには、高校までに身につけた力を大学での学びにふさわしい、あるいは必要とされるものに高めていくことが求められる。そのために重要なのが「初年次教育」である。

 本学の「初年次教育」は、広く大学での学び一般への対応と、教員をめざす第一歩を刻むという二つの側面を有し、前者を各専修の教員が、後者を学校教育講座の教員がそれぞれ担っている。

取り組みの内容・方法

 「初年次教育」は、具体的には「大学での学び入門」「教職入門」「現代教師論」「専修基礎ゼミ」の4つの授業で構成されている。

 学生は、「大学の学び入門」、「専修基礎ゼミ」で大学以降の課題探求的な学びの方法を実践的に学び、「教職入門」、「現代教師論」では、教職を目指すものとしての自覚や課題意識を明確にする。「大学の学び入門」、「教職入門」は前期に、 「現代教師論」、「専修基礎ゼミ」は後期に開講されることから、一年間かけて、じっくりと教員養成大学の学生としての基礎づくりを行うカリキュラムとなっている。

 ※取り組みの詳細: 奈良教育大学広報誌「ならやま」2012春号 

「大学での学び入門」授業風景

学生・教員に対するインパクト

 ここでは、高度な専門的職業人としての教員養成により密接に関わる「教職入門」「現代教師論」の成果と課題について述べたい。

 今回の改組にともなう新カリキュラムでは、改組以前の旧カリキュラムでは1年生後期に実施していた「現代教師論」を、前期後半の「教職入門」と後期の「現代教師論」に拡充した。前期後半に「教職入門」を設定したことにより、入学後の早い段階から教職への志向を確かなものにするとともに、教職をめざすものとしての学びについて、学生自身がイメージを持つことを可能にした。また、「教職入門」と「現代教師論」の二本立てとすることで、より深い内容の学びを促すことができるようにした。

 さらに、旧カリキュラムの「現代教師論」は、授業を担当する学校教育講座の教員のみで行っていたが、「教職入門」「現代教師論」については、授業担当は学校教育講座教員であるが、履修する全専修の学年担当教員(新入生担当教員)が参加し、授業中に各専修グループに分かれて行うディスカッションなどに立ち会うことで、各専修教員が自専修の学生の学びの状況を把握し、専修での学びが中心となっていく次年度以降の学生指導につないでいくことを可能にした。

取り組みからの示唆

 学生に課した省察の小レポートなどからは、教職をめざすためにどのような力量が求められるのか、現在の自身に照らしたとき何を身につける必要があるのか、そのためにはどのような学びが必要なのかを、学生自身が気づき、今後の学びのあるべき姿を構築していこうとしていることが読み取れた。その意味では、初年次教育改革の意図は一定程度果たされたといえる。もとより、より重要なのは構築した学びのあるべき姿を学生が実現していくかどうかであり、それについて新カリキュラムで学んだ学生の卒業時での状況を把握することは今後の課題である。

今後の取り組みの視点

 今後の取り組みの視点として、以下の2点がある。

  1.「学びの技法」の修得をいかに促すか。
  2.「学び」から「知の創造」への発展をいかに促すか。 

 本学の新カリキュラムによる初年次教育は、2012年度から開始されている。本年度に卒業する学生の卒業時での状況を把握し、それまでの学生との学びに対する認識の違い等を検討するところから、取り組みのリフレクションが可能になるものと考えている。

 学生に課した小レポートや授業担当者らによる意見等、これまでに収集されたフィードバック情報を活用した、成果検討のための具体的な視点を本年度中に設定し、新カリキュラムをより有効に機能させていくための方策について議論を行っていく予定である。

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