帝塚山大学のFD行事の変遷について

中島 剛(事務局学生支援センター 教学支援課)

 

概要:本学のFD行事のうち、授業改善アンケート、FD講演会、公開授業の取り組みについて現状とそれまでの変遷について説明します。

キーワード:授業アンケート、講演会、公開授業

帝塚山大学
帝塚山大学のWebページです。

取り組みの背景

FD行事をFD推進室を設置して以来行ってきていたが、導入当初から教員からは「義務感」「負担感」が感じられた。FD行事の実施には教員・職員・学生と「負担」が大きかったため、どうせ負担があるならば、少しでも教員の授業改善が学生のためになることを考え、教員に対してヒントとなるものを提示しようという方向に変更になってきたことを報告する。

授業改善アンケート

学生の声を聞いて授業改善に資するということで実施してきたが、教員からは「何度とっても同じような結果にしかならない」、学生からは「毎時間毎時間アンケートを回答するのがしんどい」といった声が聞かれたため、改善を重ねてきている。

公開授業

教員が他の教員の授業を参観することで、新たな教授法に出会い、改善することをねらいとしている。しかし、運営については簡単にはできないため、色々な方向を探りながら実施している。

FD講演会

2010年度までは、外部や学内の講師による講演形式のものを行っていた。ただ、授業改善アンケートの学生からの自由記述や公開授業の取り組みから学内にも多くの「良い取り組み」があることから、それを共有するものとして変更をしてきている。

※「FD推進室」は2012年度から「全学教育開発センター」と名称を変更した。本取組は2011年度までの取組を記載しているため、全て「FD推進室」と表記している。

授業改善アンケートの変遷

(現状)2011年度

1.実施時期

前期:5/16~5/21 (予備期間:5/23~5/28) 7/1結果返却 合計401科目 26,437人

後期:11/7~11/12 (予備期間:11/14~11/19) 12/7結果返却 合計378科目 22,155人

2.実施科目

各教員の担当する履修者数が最も多い1科目(リレー科目、集中講義科目、共同担当科目は除外)

3.前年度との変更事項

(1)授業改善の取り組みを学内Webで教職員と学生に公開した。

(2)教員の授業における工夫を全教員に渡した。

(3)アンケートの質問事項を変更した(学生に属する部分と教員に属する部分)。

 

(過去の経緯)

 

2007年度

1.実施時期

前期:6/11~16(予備期間:6/18~23) 7/9結果返却 合計630科目 46,858人

後期:11/26~12/1(予備期間:12/3~12/8) 1/10結果返却 合計591科目 42,267人

2.実施科目

  履修者21人以上の科目(リレー科目、集中講義科目、大学共通科目は除外)

3.次年度に向けての検討事項

 (1)結果返却をできるだけ早くする。

 (2)教員がアンケート結果を見て「結果を踏まえての授業改善方法」

  「本学のFD推進についての意見」をFD推進室に提出する。

 

2008年度

1.実施時期

前期:6/9~6/14(予備期間:6/16~6/21) 7/14結果返却 合計643科目 45,406人

後期:11/17~11/22(予備期間:11/24~11/29) 1/6結果返却 合計562科目 39,030人

2.実施科目

履修者21人以上の科目(リレー科目、集中講義科目、大学共通科目は除外)

3.前年度との変更事項

  教員がアンケート結果を見て「結果を踏まえての授業改善方法」

  「本学のFD推進についての意見」をFD推進室に提出した。

4.次年度に向けての検討事項

 (1)学生から毎時間アンケートをすることになるという意見があったこと、

  教員からは何科目実施しても結果が同じという意見があったため、実施

  科目数を見直す。

 (2)実施時期が遅いため、今授業を受けている学生に改善状況が反映されな

  いとして、実施時期を早期化する。

 

2009年度

1.実施時期

前期:5/11~5/16 (予備期間:5/18~5/23) 6/19結果返却 合計384科目 27,832人

後期:11/2~11/7 (予備期間:11/9~11/14) 12/4結果返却 合計414科目 24,868人

2.実施科目

各教員の担当する履修者数が最も多い1科目(リレー科目、集中講義科目は除外)

3.前年度との変更事項

(1)実施時期を早めた。

(2)実施科目数を履修者数の多い1科目とした。

4.次年度に向けての検討事項

 (1)アンケート文言を一部訂正する。

 (2)結果を見た上での改善について記載する「意見聴取シート」に

  FD講演会の題材を探すべく、授業運営で困っていることを聴取する。

 

2010年度

1.実施時期

前期:5/17~5/22 (予備期間:5/24~5/29) 6/24結果返却 合計405科目 27,808人

後期:11/8~11/13 (予備期間:11/15~11/20) 12/7結果返却 合計377科目 23,585人

2.実施科目

各教員の担当する履修者数が最も多い1科目(リレー科目、集中講義科目、共同担当科目は除外)

3.前年度との変更事項

(1)「意見聴取シート」に教員が授業運営で困っていることを付け加えた。

(2)授業での工夫している点をもらい、良いと思われる取り組みを全教員に

  配布した(後期にテスト実施)。

4.次年度に向けての検討事項

 (1)アンケート質問項目を学生に属する部分(予習・復習、シラバスを参考にしたか 等)

    と教員に属する部分(板書の仕方、資料の提示の仕方 等)に分けて、教員が何を改善

    すればよいかわかりやすいものにする。アンケート結果の見方や授業のチェックシート

    を作成し、授業改善のヒントとしてもらう。

 (2)「意見聴取シート」に教員が授業で工夫している点を記載してもらい、全教員(専任・非常勤含

    む)にティップス集として渡す。

 (3)教員の授業改善への取り組みを学内Webで公開する。

公開授業の変遷

(現状)2011年度

1.実施時期

    前期:6/29人文学部教員、6/29経済学部教員、6/30法学部教員、7/5現代生活学部教員、

       7/6現代生活学部教員、7/7 現代生活学部教員

    後期:10/17~10/29

2.実施体制

前期:授業改善アンケートの結果を基に6人が公開する(FD推進室会議で選出)。

後期:専任教員が少なくとも1科目を公開・参観する。非常勤講師は希望者のみ公開・参観する。

    全てが終わった後にFD推進室会議で意見交換を行い、次年度以降の継続等を検討する。 

3.前年度との変更事項

  (1)前期公開授業について公開数が少ないとの意見が会議で出されたため、回数を増やした。

    また、各学部1人という考えではなく、アンケート結果の良い教員に依頼する。

  (2)後期公開授業週間の申込みを担当教員間で行う。しかし、結果として参加者数が減少した。

(過去の経緯)

2007年度

1.実施時期

前期: 6/27人文科学部教員、7/2経済学部教員、7/5経営情報学部教員、6/28法政策学部

教員、6/21心理福祉学部教員、6/25現代生活学部教員

後期: 10/17~10/30

2.実施体制

   前期:各学部1人が公開する(各学部選出)。

   後期:専任教員が少なくとも1科目を公開・参観する

3.次年度に向けての検討事項

   実施初年度ということもあり、もう1年様子を見る。

 

2008年度

1.実施時期

前期: 6/25人文科学部教員、6/30経済学部教員、6/30経営情報学部教員、7/9法政策学部

教員、6/30心理福祉学部教員、6/19現代生活学部教員

後期: 10/15~10/28

2.実施体制

  前期:各学部1人が公開する(各学部選出)。

  後期:専任教員が少なくとも1科目を公開・参観する。非常勤講師は希望者のみ公開・参観す

     る。全てが終わった後に全体で意見交換会を行う。

3.次年度に向けての変更事項

 (1)前期公開授業の担当者を授業改善アンケートの結果を見てFD推進室会議で選出し、依頼する。

 (2)後期公開授業週間実施後の意見交換会を取りやめ、FD推進室会議で意見を集約する。 

 

2009年度

1.実施時期

前期:6/4現代生活学部教員、6/16経済学部教員、6/19経営情報学部教員、6/19法政策学部教員、6/25心理福祉学部教員、6/25人文学部教員

後期: 10/19~10/31

2.実施体制

前期:各学部1人が公開する(FD推進室会議で選出)。

後期:専任教員が少なくとも1科目を公開・参観する。非常勤講師は希望者のみ公開・参する。

    全てが終わった後にFD推進室会議で意見交換を行い、次年度以降の継続等を検討する。

3.次年度に向けての変更事項

  回数を実施しても、参観者が増えないため、前期公開授業を各学部から1人とするのではなく、

 各キャンパス1人に公開してもらう。

 

2010年度

1.実施時期

前期: 6/28人文学部教員、7/2心理福祉学部教員

後期: 10/20~11/2

2.実施体制

前期:各キャンパスで1人が公開する(FD推進室会議で選出)。

後期:専任教員が少なくとも1科目を公開・参観する。非常勤講師は希望者のみ公開・参観する。

    全てが終わった後にFD推進室会議で意見交換を行い、次年度以降の継続等を検討する。

3.次年度に向けての変更事項

 (1)前期公開授業について公開数が少ないため参観できないことから、回数を増やす。各学部1人

   など定型的ではなく、アンケート結果の良い教員を選抜する。

 (2)後期公開授業週間の申込みを担当教員間で行う。

FD講演会の変遷

(現状)2011年度

1.前期

  ワークショップ形式

   「アクティブラーニングについて」

   「学生の学びを促進する授業運営について」

   「要支援学生への対応について」   参加者:27名

2.後期

  ワークショップ形式:

   「私語対策について」

   「発達障害の基礎知識」   参加者:20名

3.今年度の実施資料

 

(過去の経緯)

 

2007年度

1.前期

  講演形式:

   FDと教育改革」学外講師 参加者:53名

2.後期

  講演形式:

   「学生の変化と組織的なFD活動の取り組み」学外講師 参加者:29名

3.次年度の向けての検討事項

 (1)初年次教育をテーマとする。

 (2)講演者は学内者も可能とする。

 

2008年度

1.前期

  講演形式:

   「学士課程教育のなかでの初年次教育」学外講師 参加者:40名

2.後期

  講演形式:

   「Educational Developmentとしての学習支援」学内講師 参加者:28名

3.次年度に向けての検討事項

  アクティブラーニングをテーマとする

 

2009年度

1.前期

  講演形式:

   「学生の理解を促進するアクティブ・ラーニングの手法」学内講師 参加者:45名

2.後期

  講演形式:

   「学生の変化・成長を促す授業づくり:協同学習の考え方と進め方」学外講師 参加者:30名

3.次年度に向けての検討事項

  具体的な授業方法の改善に資するものを入れる

 

2010年度

1.前期

  講演形式:「響く声、疲れない声、メリハリのある声

        ―そういう声でリズミカルに講義をする―」学内講師 参加者:29名

2.後期

  講演形式:「効果的な大人数講義を求めて-教育心理学活用の観点から-」

        学外講師  参加者:22名 

3.次年度に向けての検討事項

  学内に参考となる取り組みも多いので、学内での情報共有を目指す。

取り組みの位置づけ

本学での「授業改善アンケート」「公開授業」「FD講演会」は、本学FD活動の基幹をなすものである。

授業改善アンケートで学生の声を聴き、公開授業で他の教員の取り組みを参考にし、

FD講演会で他大学等の優れた取り組みを学ぶというものである。

実施体制としては副学長を室長とするFD推進室が担っている。対象は約5,000人の学生で、専任教員は144名、非常勤講師は約400名程度である。

取り組みの内容・方法

[アンケート関連]

1.アンケート用紙

  1~6が学生に属する質問、7~13が教員に属する質問事項となっている。

2.授業運営にかかるチェックリスト

  7~13の質問事項について今後改善に参考となる取り組みを掲げている。

3.本学教員の授業での工夫点を集めたティップス集

  本学に勤務する教員の取り組みのうち、今後の授業改善に資すると思われる取り組みを

  「講義の進め方」、「板書」、「双方向性」などの項目別にまとめている。

【公開授業関連】

参観シート

  以前は提案したいことなどを記載してもらっていたが、記載しにくいという意見が出された

 ため、「参考になったこと」「質問したいこと」のみにした。

 【FD講演会関連】

ワークショップで扱った教材(要支援学生について)

【FD推進室報告集】

 1年間の報告をそれぞれの資料とともにまとめ、教職員に配付し、学生に対しても図書館で

閲覧させている。2011年度の報告集も作成中である。

アンケート用紙

チェックリスト

ティップス集

参観シート

ワークショップ資料(教員編)

ワークショップ資料(職員編)

学生・教員の声

【学生の声】

アンケートの後、各学部で「学生ヒアリング」を行っている。そこでは次のような意見が出されている。

[授業改善アンケートについて]

  • 現在の改善アンケート調査は、定型的な形となっており、自由記述欄以外は、改善を求めることが難しいので、改善効果を向上させるための多面的な評価システムが必要である。
  • 自由記述欄は、今後も続けて欲しい。以前、自由記述欄に「板書をきれいに書いて欲しい」と複数の学生が書いたところ、先生がすぐに改善してくれて良かったため。

[シラバスについて]

  • 紙のシラバスは、個々の学生に配布しなくても良いが、いつでも参照できるように学部事務室等に設置して欲しい。
  • 入学時はシラバスを見ても内容がよくつかめない。先輩の授業の選択の仕方や意見などをシラバスや別のネットで載せて欲しい。

[その他授業、学習環境について]

  • 休憩できる場所を複数個所に設置したり、ソファを置くなど、授業時間外にくつろげるスペースを増やして欲しい。
  • 出席点を与えるので、興味のない学生がやってきて、授業を聞かずにうるさく騒いでいる。理解していれば良いわけで、出席点は意味がないのではないか。

【教職員の声】

[授業改善アンケートについての意見]

  • 今回のアンケート結果において、予想外に学生の満足度が高かったことが判明しました。今後も、授業内容のレベルを下げることなく、より内容の濃い授業展開をするために、全体としての底上げと並行して、理解度の高い学生に対しては、可能な範囲でより発展した内容のものを追加し、学習意欲がさらに高まるように授業内容を精選していきたいと思います。                                                   
  • 授業運営についての学生の視点は確かなものがあると思います。10年位前から、前任校においてもこのようなアンケートを経験しておりますが、自分自身が弱いなあ(弱点)と思っている部分を学生はきっちりと指摘するからです。そして、すべての項目において自分自身の目標に達した本結果には満足しています。大学や科目、受講者数や、その年度毎の学生の気風により、授業の方法は変わると思いますが、結果を踏まえて地道な改良を加えてきた努力が数字になっていると思うからです。今後も、さまざまの授業方法の開拓と研鑽に加え、その年次とその日その日の学生を見る(理解する)ことを続けるつもりです。
  • 講述するのが楽しく思える授業を、今後も日々行っていきたい。講述する側(自分)が楽しいと、それを聴く学生にも確実に伝わるものであることが、このアンケート結果で改めて判りました。
  • 説明がわかりにくいという指摘を受けましたが、この点に関して、二つの対策を考えています。一つは、授業で話している内容が、全体の中でどういった位置付けがされるかを、話のナレーションとして入れる工夫をすることです。二つめは、具体例をもっと交えながら、抽象的な概念を説明することです。
  • 私語対策について、何度注意しても効果なく、授業が中断されてしまいます。 あるいは、きちんと授業している学生が気分を害しているところがあるので、大教室ではありますが、名簿順に座席を決めるなど、私語のしにくい形式をとっていきたいと思います。

 [公開授業についての意見]

  • 学生の関心や反応を拾い上げ、丁寧に対応なさって、授業に活かしておられて、とても勉強になりました。教員側の負担は大きくなると思うのですが、手間をかけた分だけ、学生が取り組もうとする方向へ作用するものだと、参考になりました。
  • 身近なたとえ話で学生の関心を高めていたこと。教室を廻りながらの講義、学生に発言を求めるなど、学ぶ雰囲気づくりを参考にさせていただきました。
  • 学問的で水準の高い内容を、パワーポイントを使いながらわかりやすくお話しなさっていて、感銘を受けました。「ここがおもしろいところ」というポイントが生き生きと伝わってきて、学生の関心をぐっと引き込むコツを教えていただいた気がします。
  • 小テストを効果的に使っているので、是非それを私の授業においても採用したいと思います。
  • 教科書に加えてレジュメを用いて勉強させ、小問などを通して理解させるという授業方法はとても参考になりました。

 [FD講演会についての意見]

~今後開催してほしい講演内容~

  • 私語をしている学生達の本音をしっかりとらえる→2011年度に実施
  • 大学生としての基礎能力(基礎学習能力)
  • 学生へのマナー指導について→学内で検討中
  • 私語よりもう少し範囲を広げ、マナー全体について
  • 心の病気を抱えている学生への対応方法(代替策を用いた学習支援をどこまで可能とするのか、なども含めて)→2011年度に実施
  • 授業進行の組み立て方(メリハリのある授業、ポイントを分かりやすい授業の特徴など)
  • 不安障害学生への対応について
  • シラバスの組み方、活かし方
  • 学生の授業に対するモチベーションUP術
  • 現在の学生の特質について
  • 学生の興味をひく授業の例→2011年度に実施
  • 発達障害学生への対応→2011年度に実施
  • 講義室のサイズに応じた授業
  • 休学、退学学生について

 ~FD推進室に対する要望・意見~

  • 教員と職員の交流が大切だと思う。
  • モデルケースの紹介を増やしてほしい。
  • 自分自身で考えていた問題の共有や発展に向けての意見交換が出来て良かったと思う。
  • もっと多くの教員に参加してもらえるような工夫が必要である。
  • ワークショップ型のFDがよい。

資料・文献・他大学の取り組み等

  1. 関西地区FD連絡協議会等での情報交換
  2. 他大学のFD担当者との意見交換
  3. 他大学のティップス集
  4. 他大学の取り組みの変遷

取り組みの視点

【コメントや助言を希望する点】

1.事務部局である程度考えた案であるため、先生方の目から見てどのように思われたかをお伺いしたい。

2. 教員の授業改善に役立つ組織として認識してもらうために他大学でどのような組織作りをされているのかをお伺いしたい。

 

取り組みからの示唆

 FD行事に携わる事務局側から見ているとどうしても、教員にとっては「負担感」「ネガティブなもの」といった印象があるように思える。また、どうしても上からの押し付けといった感が多く、本来求められている自主的な改善にはつながっていない。

 本学でも事務局側ではそういった反省の上に立って、「上→下」といったFDではなく、「横→横」のものを目指す方が良いとの結論に立ち、教員のヒントとなるようなものを紹介をしていくことを2010年度の取り組みから考え始めた。

 まだまだ考えが至らない部分もあるかと思うが、この方針で2~3年実施してみて、教員からの反応等で今後の実施策を検討していきたい。

 

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