滋賀県立大学の「授業の基本」研修会

倉茂好匡  滋賀県立大学教育実践支援室 

滋賀県立大学教育実践支援室は、偶数年度に全6回シリーズの「授業の基本」研修会を実施している。1回あたり約2時間の時間を必要とし、原則として平日の授業終了後に行っている。対象は新任教員など「授業の基本的運営方法に不安を感じる教員」である。内容は、授業に必要な基本的スキルに始まり、学生の理解度確認法、教材研究の方法、視聴覚教材の使い方、発問の種類と方法、宿題の出し方など多岐にわたる。この研修会は、関西地区FD連絡協議会共同実施WGにも公開した。その結果、のべ136名(学外からはのべ74名)の先生方にご参加いただけた。

キーワード: 新任者研修、授業の基本、教材研究、視聴覚教材、授業の双方向性

取り組みの背景

「授業の基本」研修会は、滋賀県立大学教員の「授業の方法の基本がわからないから不安だ」という声をうけて企画されたものである。しかも、多くの教員から「気軽に参加できる研修会を」という要望もあった。そこで、授業を運営する上での基本的問題に焦点をあて、参加者が楽しんで受講できるように工夫している。2008年度より開始した。講師は基本的に教育実践支援室長であるが、内容によっては支援室員も担当している。

取り組みの位置づけ

偶数年度には、全6回のシリーズ(毎回約2時間)のものを実施している。奇数年度は、この短縮版(1日程度、約6時間)を行っている。2010年度には、関西FD連絡協議会共同実施WGにも公開し、他学の先生方にもご参加いただけるようにした。

次節より、各回の研修内容と、それに対する参加者の感想を列挙する。

授業の基本① 「もっとも基本的なこと」 (4月2日10:00~12:00)

 大学の授業の中には、教師が一方的にしゃべり、ほとんどの学生は居眠りをしている、ということが意外と多くある。なぜこんなことになるのか?そこで 「みそ汁のつくりかた」を題材にし、講師が考える「わるい授業」と、「それを可能なかぎり改善した授業」を演じ、受講者にはその違いを実感していただく。

 これにより、「発声」「立ち位置」「視線」「板書法」「机間巡視」「発問」などの重要性を体感していただくとともに、授業展開の基本(特に、「導入」での「興味付け」の重要さ)を理解していただく。

授業の基本② 「授業展開で陥りやすい罠」 (4月2日13:30~15:30)

 大学で「教師が一方的にしゃべり、学生は居眠りしている」ような授業には共通する症状がある。これを講師は「総論大好き症候群」あるいは「具体性欠乏症」と呼んでいる。この回では、いくつかの授業の事例をあげ、「総論大好き症候群」「具体性欠乏症」になっている授業と、それを改善した授業を実際に行い、その違いを体感していただく。

 これにより、「テキストの棒読みのような授業はなぜ悪いか」「総論に終始する授業はなぜつまらないか」を理解していただく。また、そのような状態から脱却するための「教材研究」の重要さにも気づいていただく。

授業の基本③ 「学生の理解度確認」 (5月7日18:30~20:20

 理系で数式を多用するような授業の場合、一方的授業を行うと「学生はちんぷんかんぷんのままでついてこれない」ことになりがちである。そこで、実際に流体力学で「連続方程式」を教えることを事例にし、「文系の先生方がこの授業についていける」ような授業展開を試みる。そのためには、授業の随所で「受講者が理解しているかどうか」をチェックしなくてはならない。そのために、講師はどのような工夫をしているか、その様子を観察していただく。

 これにより、机間巡視や発問の大切さのみならず、教師が学生の様子や表情を観察しながら授業をすすめることの大切さに気づいていただく。

大阪工業大で行った研修会の風景①
大阪工業大で行った研修会の風景①

大阪工業大で行った研修会の風景②
大阪工業大で行った研修会の風景②

授業の基本④「視聴覚教材の効果的利用法」(6月4日18:30~20:20)

 最近、大学で行われている授業では、パワーポイントファイルを用いたものが非常に多い。ところが、それらの中には「下手な電子紙芝居」になってしまっているものも多い。また、授業にVTRを利用している授業も多く見かけるが、これも下手をすると「学生は居眠りしていて、見てくれない」状態になる。

 そこで、今回は「学生が食い入るように見るVTR」と「学生を居眠りにいざなうVTR」をまず比較していただく。また、パワーポイントファイルでも「悪い例」と「改善した例」をごらんいただく。そのうえで、授業のどういう場面で画像やVTRを用いると効果的か(すなわち、授業の「変化」の入れ方)に気づいていただく。

授業の基本⑤「発問と指導」(7月9日18:30~20:20)

 学生を授業に参加させる重要な手法のひとつが「発問」である。しかし、効果的な発問を行うためには、それぞれの発問に「授業者の意図」が明確になっていなくてはならない。また、発問にはさまざまな種類があり、それに応じて期待できる効果も異なる。そこで、具体的な授業例での「さまざまな種類の発問」を比較し、その効果を実感していただく。また、実際に発問を作成するミニワークショップも実施する。

 また、大学の授業では「堂々と遅刻してくる学生」や「私語を行う学生」「ケータイをいじる学生」もよく見られる。自らの授業を「学生にとって興味深いものにする」のはもちろんだが、そのような「非行的行動」を行っている学生に対するときの基本についても学んでいただく。

授業の基本⑥「宿題と評価」(7月30日18:30~20:20)

 「単位の実質化」を実施しようとするなら、学生には授業外学習をさせなくてはいけない。しかし、「自習してきなさい」と指導するだけでは、学生は自習などしてこない。そのためには、どうしても「宿題を課す」必要がある。また、回収した宿題に対して授業者から赤ペン添削等がなされたものが学生に返却されたとき、学生にとっては「その後の復習」にきわめて効果的なものになる。また、宿題の採点結果は、期末の成績評価の大きなツールにもなる。

 今回は、教育実践支援室員の中で「宿題を出すような授業運営をしたら、味をしめてやめられなくなった」先生方に、ご自身の事例をご紹介いただく。

研修会参加者の感想から

第1・2回: ・このような「授業の基本」を新任教員や院生に学ばせることには大きな意味がある。 ・自分の頭の中で経験的に積もっていたことがスッキリと整理できた。 ・具体的な導入例がいくつも挙げられていて参考になった。

第3回: ・教材研究とはどういうものか、どうすれば授業展開がうまくいくのかがよく理解できた。 ・自分の専門外の授業を実際に受けてみて、学生の気持ちがよくわかった。 

第4回: ・文章や写真だけでは実感できないものをVTRで見せることの効果がよくわかった。 ・「悪いスライドの見本」は、私がよくやりがちなものだった。 ・パワーポイントに頼りすぎないこと、板書の重要性を再確認した。

第5回: ・「授業のヤマを考える、そのために発問する」という大切な部分がおろそかになっていたことに気づいた。 ・発問の種類とその効果、それらを組み合わせることが効果的であることがわかりました。

第6回: ・宿題を出すときに「解答のポイント」を提示することでコピペを防げることが参考になった。 ・宿題の重要性が真に理解できた。 ・さまざまな宿題の出し方や評価の方法、特に添削の方法が大変参考になった。

取り組みからの示唆

 滋賀県立大学での「授業の基本」研修に参加された方々より、同様の研修会を行ってほしいとの依頼を多く受けた。2010年度中に筆者が関西地区他学でおこなった研修会の事例について報告する。

関西学院大学: 大学院生やPD対象。3日間のインテンシブコース。座学とワークショップの組合わせ。

関西看護医療大学: 教員対象。「授業の基本」にワークショップを加えた1日6時間の短縮バージョン。

大阪歯科大学: 教員対象。「授業の基本①②④⑤」の内容を1日で。

大阪工業大学: 教員対象。「授業の基本①②」の内容を70分にした短縮バージョン。

これらの実践より気づいたこと:「教材研究」の視点が抜けている教員が多い。そこで、この点に特化したワークショップを行うと、授業改善効果が高いことがわかった。滋賀県立大学の2011年度研修会では、この点を踏まえたワークショップを行うことにした。

取り組みの視点

1. 「授業の基本」と銘うった研修を行う場合、本学の取り組みでは不足している点はなにか、ぜひご教示いただきたい。

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