<地域>と<大学>をつなぐ経験値教育プログラム

大江篤 園田学園女子大学人間教育学部・地域連携推進機構

 

概要:本学は、建学の精神「捨我精進(しゃがしょうじん)」のもと、「地域と共に歩む大学」として、地域に開かれた大学づくりを推進してきた。このプログラムでは、多様な地域課題のなかで「健康づくり」「学校教育」「生涯学習」「子ども・子育て支援」を 中心に地域課題の解決に向けて、「知」の拠点としての役割を強化した全学的な教育改革を行うことを目指している。 

 本学の教育コンセプトである循環型の「経験値教育」では、多面的に課題に向き合う、社会に有用な人材の育成を目指す。「経験値教育」の実質化として、尼崎市をフィールドに演習科目「つながり プロジェクト」を新設し、地域と共に調査・研究した後、提言を行う。また、人と人との「つながり」を可視化することを一つの評価指標として、学生自らが「経験値」を自覚することができる新しい評価システムを構築した。

 このプログラムを進めるために、平成254月に設置した地域連携推進機構を中心に学部・学科を越えた横断的な教育・研究・社会貢献の体制を築き、文部科学省「地(知)の拠点整備事業」の採択を受けて、推進している。

キーワード:経験値教育、健康づくり学校教育生涯学習子ども・子育て支援

園田学園女子大学地域連携推進機構 HP

取り組みの背景

 本学の学部・学科(コース)はいずれも国家資格の養成課程を中心とする教育課程であり、女性の自立を支える専門性を磨くことを目指している。しかし、資格や免許を取得するだけでは不十分である。専門性の背景に「深い教養」や「人間としての深み」が備わっていなければならない。すなわち「高い専門性と深い教養を備え、社会で輝ける女性」でなければならないと考える。そこには、講義や座学だけでなく「知識」を「知恵」に変える「経験値教育」言い換えれば社会との関わりを「体験」し、「知恵」を将来の自立の縁(よすが)にするべく多岐にわたった地域連携の中で自己研鑽が行われた人材の育成が必要と考える。

以上のような教育理念を実現するために、経験値教育に取り組んできたが、学生の経験値の成長を可視化し、評価できる教育プログラムの構築することが十分ではなかった。また、多様な地域課題の解決にむかうPBL型の演習科目を充実させるためには、学部学科を横断した科目の設定の必要性を検討してきた。

取り組みの位置づけ

本学の特色である循環型の「経験値教育」を実質的なものとするため、地域においてどれだけの「経験」を積み、人間力を高めることができたかということを学生が実感できる新しい評価システムを構築した。学生は、正課・課外(地域活動、ボランティア等)において地域の方々とつながるところから始め、地域の方々との有意義な交流から、人間的な成長を図った。地域における不定型な活動のなかで試行錯誤しながら学習を深めることで、学生たちの主体性を育むことができると考えた。そこで、平成27年度に教育課程の改定を行い、新たに学部学科を横断した必修科目を設定する。この新しい学修と経験値評価システムにより、経験値の可視化を可能とすることを目指した。

本プログラムの実施体制は、地域連携推進機構内に事業部・運営委員会(教員組織)を設け、事務局が事務を取り扱う。事業部には、4つの地域課題毎の部門長をおき、事業を推進している。なお、地域連携推進機構が文部科学省「地(知)の拠点整備事業」の担当部署である。

取り組みの内容・方法

【経験値評価システム】

 「経験値」とは、教室で理論的なことを学んだ上で、地域での学びを通して、理論的なことが証明されたり、理性的に考え、納得できたりすること、教室で学んだことが地域社会でどう活かされるかを実感することで理論と実践がむすびつき,さらに次の学びへと発展していく、「知識」を「知恵」へと変える力である。

この「知識」を「知恵」に変える循環型の「経験値教育」を実質的なものとするために、新しい評価システムを導入し、地域においてどれだけの「経験」を積み、人間力を高めることができたかということを学生が実感できる指標を策定する。

 経験値評価は、3つの評価からなる。

(1)アセスメント評価…学期に1回実施するアンケートで評価する。輩出する人材像を明確にし、学生の自己評価を行う。この評価基準については現在、検討中である。

(2)プロジェクト評価…平成28年度から開講される全学横断必修科目「つながりプロジェクト」における一年間の活動を自己評価・連携先の評価をもとに教員が評価を行う。演習の形態(フィールド型、集中講義等)にあわせて、中間評価、最終評価を検討している。

(3)つながり評価  …学生の正課、課外の地域活動の報告をポートフォリオとしてデータベース化する。学生は活動毎に、連携先の目的、学生自身の目標、活動にあたって工夫した点、活動内容を報告する。また、連携先の地域の方々に学生の活動を5段階で評価していただき、コメントをいただく。

  活動時間、つながりを持つことができた人の数、活動範囲(活動場所googleマップにポイントされる)に応じてポイントを集積することができ、定数的に評価を行う。

   活動内容を深めるとともに、定量的に示すことにより、学生の地域活動の活性化をねらいとしている。

経験値評価概念図

この経験値評価システムは、平成26年度は全学生の20%程度のサンプルですすめていくが、平成27年度にはすべての在学生が経験値評価システムを使用し、教職員がその指導にあたる。

 

【つながりプロジェクト】

平成28年度には全学科横断の地域志向必修科目「つながりプロジェクト」(2年次配当、通年)を新設し、課題解決型学習にも取り組む。

(1)大学の社会貢献(1年次生)

地域を志向した基幹科目として「大学の社会貢献」を尼崎市とともに開設している。この科目は、尼崎市の特性と課題を学び、グループワークで解決策についてのコンペを実施する。そのことを通して学生達が地域社会における大学の役割について考えることにより、大学で学ぶことの意義と責任、自分自身が社会に果たすべき役割を自覚し、本学が果たすべき役割について学生自身の意見を形成してもらうことを目標としている。

(2)つながりプロジェクト(2年次生、必修) 平成28年度開講

2年次生の学部横断必修科目「つながりプロジェクト」という演習科目で尼崎市の地域課題に取り組む。この演習で学生たちは、学部学科に関係なく、「健康づくり」「学校教育」「生涯学習」「子ども・子育て支援」の4つのテーマを主としたプロジェクトのいずれかに所属し、1年間、調査・研究を行い地域課題の探求と解決に向けて研究し、地域に提案を行う。

 

平成25年度のプロジェクトのテーマ

【健康づくり】

  • 高齢者のための運動交流プロジェクト開発と実践
  • 地域にむけた手洗い指導の拠点づくり
  • 高齢者が安心して暮らせる尼崎づくり
  • 健康意識の高い町尼崎の土台づくりと食育

【学校教育】

  • 1人一台タブレット端末実現に向けたICT活用モデルの作成

【生涯学習】

  • 地域と取り組む防災教育
  • 地域資源を活用したまちづくりモデルの構築
  • 庄下川環境を利用した子どものための健康づくりプログラムの構築

【子ども・子育て支援】

  • 子育て支援施設スタッフのスキルアップ支援プログラムの開発

つながりプロジェクト

学生・教員に対するインパクト

 「経験値評価システム」の稼働は平成26年度からであり、「つながりプロジェクト」は平成28年度の開講となる。したがって、本取り組みはスタートしたばかりであるため、定量的、定性的な評価はできない。したがって、「経験値教育プログラム」構築の前提と為る地域活動の推進にもとづく、学生のコメントを提示したい。

学生コメント抜粋

●「授業での学習だけでなく、こういった地域との繋がりを持てる活動に関わることで、これまでとは違う新鮮な気持ちになれました。今後もさまざまなことを経験し、楽しく笑顔で将来の看護師像を築いていきたいです。」

●「このテニスクリニックを通じて、自分たちが参加してくださった方々からテニスの楽しさを再確認させていただいたり、他にも教わることはたくさんありました。積極的にこのようなイベントに参加し、自分自身の成長につなげたいです。」

●「活動を通して工業のイメージが強かった阪神地域にも農業や文化等の魅力があることを知ることができ、地域の人たちは学生の力を必要としているように感じました。この経験を基に、これからもたくさんの地域の方とつながっていきたいです。」

●「学校の生徒対象のアンケートでは私たちの時代とは異なる公園の使い方を知ることができました。アンケートの結果を盛り込んだ公園のミニチュア作成では、生徒たちの希望の遊具をストローなどの簡単な材料を使いました。」

 

これらは、実際に本学学生が地域に赴いて得た学びの一端である。各取り組みを通して「大学の所在地以上の尼崎」を知るばかりではなく、また大学の授業で得た知識から体験に繋げるという貴重な経験をした。一人ひとりが実際に問題解決や新たな視点を持つことができたことは、今後学生が一人の人間として成熟していく上で重要な財産となってくれると考える。

『そのだ』の地域連携

『そのだ』の地域連携vol.2

『そのだ』の地域連携vol.3

取り組みからの示唆 

 本プログラムは、地(知)の拠点整備事業の採択を受けた平成259月より開始したばかりのものである。したがって、今後、経験値評価システムを運用していくなかで、経験値評価の持つ有用性と学生指導の上での教育効果などを検証していく必要がある。また、学生に対する地域の方の評価コメントから本学の学生の持つ力を分析するとともに、教育課程内の正課の成績評価(100点法、GPA)との関係を検証していくことが課題である。

取り組みの視点

1.本プログラムは、学生の日常的な地域活動(正課・課外)をポートフォリオ化するとともに、連携先の地域の方から評価コメントを記入していただく点を特色としている。学生の評価に学内の教職員だけではなく、学外のステークホルダーからの評価を加えている事例があれば、課題ととものご教示いただきたい。

2.「つながりプロジェクト」は、地域課題の解決を目標としたアクティブラーニングである。本学は、国家資格の養成課程を中心とした教育課程であり、3年次以降は実習が多い。したがって、低学年で学部を横断した取り組みを目指している。低年次で、専門領域を超えたアクティブラーニングの先進的な事例があればご教示いただきたい。

取り組みの画像・映像

 

つながり評価の実施

 

地域活動報告フォーム


つながりマップ


住民コメント

 

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