「レファレンスPOP」という取り組み

桂 まに子 京都女子大学・図書館司書課程・専任講師

概要:教室外の学習環境となる大学図書館を改革するという視座からFDを捉え,教員の教育活動,学生の学習成果,場としての大学図書館を有機的に結びつける仕組みと空間を形作りたいと考えた。学生の授業成果を図書館から発信し,様々な学びを伝達・共有できる新たな知的空間を大学図書館に作ることを目指し,京都女子大学の図書館司書課程科目「レファレンスサービス演習」では,2010年度より「レファレンスPOP」の実践を行なっている。本取り組みによるFD成果として,授業改善,大学図書館のレファレンスブックの可視化,授業成果物を用いた学習支援が挙げられる。

キーワード:授業成果の発信・伝達・共有,大学図書館,学習支援、ピアサポート、ラーニングコモンズ

「レファレンスPOP:これからは見える図書館」(京都女子大学・京都女子大学短期大学部図書館『KWU Library News』No. 15,2011. 3,p. 14-17)

「京都女子大学の司書課程で行われた『レファレンスPOP』という試み」(国立国会図書館「Current Awareness Portal」Posted 2011年10月5日)

取り組みの背景

 京都女子大学の図書館司書課程は,学内の全学生を受講対象としている関係上,どの学部にも所属しない独立した部署である。学内のFD活動には2010年度より参画し,初年度教育向けテキスト『京都女子大学 アカデミック・スキル』では,図書館のレファレンスブック(参考図書)の使い方に関するガイドを担当している

 教員は学生に図書館のレファレンスブックをレポート作成やゼミ発表,卒業論文の執筆に役立ててほしいと望んでいる。しかし,学生側のレファレンスブックに対する認知度は低く,どのような種類や特徴があり,どのように選択して利用すると良いのかという情報が明確に伝わっていないのが現状である。

 そこで,教室外の学習環境となる大学図書館を改革するという観点から,教員の教育活動,学生の学習成果,場としての大学図書館を有機的に結びつける仕組みと空間を形作りたいと考えた。本発表では,その実現に向けて司書課程の「レファレンスサービス演習」の受講生と共に2010年度より取り組んできた「レファレンスPOP」の実践を紹介する。

取り組みの位置づけ

 大学の授業で行なった演習や実習の成果を発表することは珍しくないが,資格取得を目指す司書課程の受講生が,在学中に授業成果を教室外で発表する場はこれまでなかった。司書課程の基礎科目を履修した学生が受講するレファレンスサービス演習では,図書館のレファレンスブックに直に触れ,実際に活用して質問に回答するという訓練を行なっている。レファレンスブックについて詳しくなった受講生が,レファレンスブックの使い方に不案内な他の在学生に向けてアドヴァイスすることを目標に作成した授業成果物が「レファレンスPOP」である。

レファレンスPOPとは

 図書館のレファレンスブックの特徴を分かりやすく利用者に伝える小型カード。2010年に発表者が考案・命名。カードの大きさは12.5×7.5cm。

 図書館の利用者である学生が館内で目にするツールであり,なおかつレファレンスブックの利用を促すツールとなるものを発案するにあたり,小売店が商品を宣伝するために用いるPOP(ポップ)の手法を応用した。

 POPとは「Point Of Purchase advertising」(購買時点広告)の略称。通常は売り場で商品の説明を補助する広告ツールを指し,顧客の購買意欲を高めて購買決定に大きな役割 を果たす。図書館の場合,商用目的ではないが,レファレンスブックの説明を補助し,利用する動機づけとなるツールという点はPOPの考え方と類似している。

 作成手順

 POPの作り手が司書課程の受講生であるのが本取り組みの特徴である。本学司書課程のレファレンスサービス演習では,1)レファレンスコレクションの把握,(2)適切なレファレンスブックの選択,(3)迅速な回答のできる司書養成を目標に授業を進めている。受講生は各自分野を担当し,大学図書館のレファレンスコーナーから1冊を選択して評価する。選択権を受講生に持たせることにより,基本ツールからユニークなツールまで多種多様なレファレンスブックが揃った(表1)。

 評価の際に用いるシートには,レファレンスブックの書誌情報の他に,概要・特色・記述内容・収録範囲,索引・付録・類書の有無などを記入しておく。このシートをもとに,学期末の授業内でカード型レファレンスツール「レファレンスPOP」を作成する。カードに必ず書名と出版年を記載することを共通のルールとし,受講生には,各自が選択したレファレンスブックの特徴や使い方を分かりやすく利用者に伝えることを意識してカードを完成させるように指導している。

大学図書館内で行なう学生発表

 来上がったレファレンスPOPは大学図書館の一角を借りて展示し,これにより,レファレンスブックを可視化する空間が生まれた。本来は,館内のレファレンスコーナーでそれぞれの本の近くにPOPを添えたいところだが,図書館の排架事情からやむを得ずパネル展示となった。図書館の入口にパネルを設置し,利用者に書架をイメージしてもらう工夫として,POPカードと一緒にレファレンスブックの背表紙写真を展示している。

取り組みからの示唆

(1)レファレンスサービス演習の授業改善受講生は,レファレンスPOPという発信型の演習を通じて,図書館の利用者にレファレンスブックの便利さや魅力を直接伝えることを経験した。教員の教育活動と学生の学習成果を教室外で発表するという新しい試みにより,発展的な演習の授業を行なうことができた。

(2)大学図書館のレファレンスブックの可視化学生にとって「使用頻度が低い」「地味なツール」であるレファレンスブックをPOPで紹介したことにより,普段使用しようと思いつかなかった本を発見するきっかけが生まれた。書架に並べるだけでは見えにくかったレファレンスブックを学生の目にとまるように可視化することは,大学図書館の学習環境の改善にも繋がる。

(3)授業成果物を用いた学習支援アンケート回答に「POPを見る人々にとって,同じ立場の学生がオススメしているということが良い影響になる」という記述が見られたことから,レファレンスPOPは学生から学生への学習支援ツールとして位置づけられることが分かった。

 学生同士による学習支援(ピアサポート)や,学生の授業成果を図書館で発信して様々な学びを学内で共有する空間作り(ラーニングコモンズ)の考え方も取り入れながら,司書課程の学びが大学の各学部・学科の学びとも結びつく仕組みを模索していきたい。

学生に対するインパクト(レファレンスPOPの効果)

  2010年度と2011年度のレファレンスPOP展示期間中に任意のアンケートおよびPOP投票を実施した。回答者数は計44名。そのうち,レファレンスPOPを見てレファレンスブックの特徴が「よく伝わった」という回答は25件,「まぁまぁ伝わった」が18件,「あまり伝わらなかった」が1件であった。POPはレファレンスブックに興味を持つのに「効果がある」という回答は43件,「効果がない」は1件であった。

 「ムーミン谷がどこにあるか知ってますか?」(図1)「ナルニア国って,どこにあるどんな国だっけ?」(図3)のような質問調フレーズを見た学生は,答えが気になり,そのレファレンスブックを読んでみたいと回答している。これは,POPを介して学生の調べものを自然に誘導するものであり,レファレンスブックの利用に直結する。 その他,「出版関係に興味ある人必見!!」(図2)のように利用対象を明確にしたキャッチフレーズや,特徴を視覚的に表現したイラスト(図2・3)にも動機づけの効果がある。

  図1-4は実際のレファレンスPOPと,アンケート回答の記述で指摘された評価/改善ポイントである。 レファレンスブックの選定方法やPOPの書き方に一部改善を要するが,レファレンスPOPは学生のレファレンスブック利用の動機づけとなりうることが示され,レファレンスPOPの持つ潜在的効果を導き出すことができた。

取り組みの視点

1. 今回の取り組みは一教員によるものであるため,学内の組織的なFD活動との関わりはまだ持っていない。図書館を核にしたFD活動の先行事例や実践例があればご教示願いたい

2. 今回の取り組みでは,大学図書館を活用して得られた授業成果を館内で発表し,学生の学びを伝達・共有できる知的空間を大学図書館に作ることを試みた。このような取り組みに賛同して実践に協力してくれる他分野の教員を学内で募りたいのだが,組織的なFD活動において教員間のコミュニケーションをどのように行なうのが効率的だろうか。

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