[大学教育における知識構成型ジグソー法を活用した協調学習の展開]

[三浦 和美] [東北福祉大学 教育学部 教育学科]

 

概要:[大学教職課程において小学校社会科教育法の講義(社会科概論・社会科の指導法・社会科教材研究)を担当している。学生が主体的に学ぶことができる方法としてグループ活動を実践し実践を積み重ねてきたが、さらに効果的な協調学習を模索したいと考えた。2013年度に初めて「知識構成型ジグソー法」を取り入れたところ、事前事後の確認テストにおいて学生の変容を把握することができた。本研究では、これまでの実践を基に学生の変容を量的・質的に分析することを目的としている。]

キーワード:[大学教育 小学校教員養成 教職課程 協調学習 知識構成型ジグソー法]

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取り組みの背景

背景:近年、大学教育において学生の主体性を伸ばす観点から講義の手法として一方的な講義形式からグループ活動等が推奨されるようになった。特に、小学校教員を目指す学生にとって、3年次に行う教育実習や教育現場に入ることを想定すれば、こうした主体的な活動は自分に必要なことに留まらず、子どもたちへの指導として行うことが求められる内容となる。しかしながら、教職課程に進んできた学生の全てがグループ活動を好んでいるかというとそうではなく、むしろ人とのかかわりを苦手としている学生も多くなっている。学生にとって他の学生と協調して学習することで自分の成長を感じたり、新たな意欲をもったりする経験を大学生活のうちに体験してほしいと考える。また、担当する講義は例年60名前後の多人数であるため、学生が主体的に学ぶことができ、かつ、効率的な学習方法を模索していた。2012年度に「知識構成型ジグソー法」を学び、これまでの課題を解決できる方法となることを感じ、翌2013年度より「社会科の指導法」で実践を行ってきた。

対象者:「社会科の指導法」受講生 例年60名程度

目的:小学校社会科授業に必要な知識や技能を主体的に学び取ることができる。

取り組みの位置づけ

位置づけ:本学では1年次学生のリエゾンゼミⅠで汎用的スキルを身に付けさせる方法として「ワールドカフェ方式」を体験する。自由に意見を交換して行うこの方式は入学したばかりの学生にとっては新しい友人を見つけたり、大学での学びを深めるきっかけになっている。1年次でこうした体験をしているため、新たな「知識構成型ジグソー法」という方法は受け入れやすい内容となっている。しかし、学内で「知識構成型ジグソー法」を実施している事例は希少である。学生が深く学ぶというのはどういうことなのか、教員は何を手掛かりにその学びの深さを見取っていったらよいのか、この講義の実践によって明らかにして行きたい。

実施体制:教員1名での指導体制

対象となる学生・例年60名前後の受講生である。女子が8割、男子が2割程度。概ね小学校教員を目指している。翌年度に4週間の教育実習を控えている。

教員に関する情報:小学校で26年間、大学で9年目を迎える。仙台市教育委員会の教科指導員、文部科学省で小学校社会科に関する指導資料等の作成に携わった。

平成4年度:全国小学校社会科研究協議会実践論文「児童が主体的に取り組む表現活動のあり方‐3年仙台みその工場へ行ってみよう」の実践を通して‐」第1席受賞

平成14年度:東京書籍応募論文「学ぶ意欲を育む社会科授業の創造―郷土をひらく「品井沼の干拓」ー」で優秀賞受賞

平成24年度:東北大学大学院博士論文「大学教職課程における効果的な小学校社会科授業力育成に関する実践的研究―小学校社会科教育法の講義・演習の実践を通してー」提出、博士(教育情報学)東北大学

取り組みの内容・方法

社会科の指導法(全16回)シラバス

第1回オリエンテーション(講義の目標・日程・事前確認テスト)

第2回授業記録の取り方実習(授業のビデオを見て授業記録を取る)

第3回特色ある社会科授業年間指導計画(調査及び発表)

第4回 社会科の指導法に関する記述(事前)、小学校社会科の教科書分析(知識構成型ジグソー法の解説と練習)

第5回~11回 小学校社会科の教科書分析(第3学年~第6学年)

※シラバスの変更点は下記の2点である。

①第5回~第10回を教科書分析に当てる。今年度教科書の改訂のため、下の教科書の配給が後期となったため、上のみの教科書を取り扱うこととなった。第11回は教科書分析を振り返る時間に当てることとした。(6月22日変更)

②確認テストはジグソー法の効果を確認するため、教科書分析が終了した翌週の6月22日に行うこととする。

第12・13回学習指導案略案作成・添削(同じグループではない3名1組で行う)

第14回 模擬授業の実施(一人10分授業と5分授業リフレクション)

第15回 社会科の指導法に関する記述(事後)、授業評価

第16回レポート提出(この講義で身についたこと、これからもっと学びたいこと)

知識構成型ジグソー法は第4回練習と第5回から第11回計8回実施する。

各回は分担する単元を提示し、3人グループで①エキスパート活動→②新しい3人グループでジグソー活動→③もとのグループに戻ってクロストーク→④まとめ ミニットペーパー記述で進める。

ワークシートを別途用意し、学びの軌跡を記入できるようにする。

学生の変容の量的分析は事前事後の確認テストで実施する。テストは小学校社会科に関する問題を教科書から抜粋して作成4点×22問、社会的関心4点×3問計100点で構成。

学生の変容の質的分析は社会科の指導法に関する自由記述の事前事後の内容を基に行う。

取り組みの様子①

[知識構成型ジグソー法を用いた教科書分析の様子を写真で紹介します。上段左①ジグソー法の解説→上段右②エキスパート活動(個人)→下段左③エキスパート活動(同一単元)→下段右④ジグソー活動(異なる3単元)となっています。]  

  

 

 

 

講義が一方的にならないようにする工夫・・・学生に対する学びのフィードバックの方法の工夫と実践

①講義自体が一方的にならないようにグループ活動を取り入れるなど活動を工夫する。(⇒これは各講義の報告をしているのでお読みいただければと思います)

②講義時間以外で講義で学んだことや学生の感想をまとめたり、疑問に答えたりしたものを学内ネットワークシステムを活用してフィードバックする(資料①)ことを継続している。(詳しくは「高度情報化時代の「学び」」を参照)

 講義の最終で学生にミニットペーパーを書かせ、それらをまとめてA4 1枚(資料②)にして、学内ネットワークシステムにアップする。(毎回講義終了後1時間以内に送信できるようにしている) 学生は翌週までの間に閲覧してくる。ほとんどの学生は閲覧済みである。デジタルを通して学生との交流を図る意味も込められている。(今年度よりスマホでも閲覧可)

 「講義を素早く振り返る方法」として、MOS宝に登録済みである。

 資料の配信の様子は、次の通りである。上(資料①社会科の指導法 配布資料一覧、7月28日授業評価に対するコメント掲載も含む) 下(資料②ミニットペーパーの実際 第11回2015・6・29)

 

取り組みの様子②模擬授業(一人10分間)と授業リフレクション(5分間)を行った。 講義室の中で同時に進行する。タイムキーパーは教員が行った。

     

学生・教員に対するインパクト・・アクティブラーニングの普及と学生の学びの深さを伝えることができるようにしたい。

[第1回講義(4月8日)実施 講義の目標・日程説明、確認テスト(事前)実施、受講生62名

 ・講義の目標・日程はシラバスに沿って説明した。その後確認テストを行った。結果は小学校社会科に関する知識を問う問題(22問×4点)では平均55点、社会的関心を問う問題(3問×4点)では平均6.3点となった。この結果から学生のタイプを4つに分けた。A群(得点高い・関心高い)13名、B群(得点低い・関心高い)7名、C群(得点高い・関心低い)21名、D群(得点低い・関心低い)21名となった。この4つのタイプからそれぞれ1名ずつ選んで抽出学生とし、今後の講義での変容を見ていくことにした。以下に各講義でミニットペーパー(MP)に書かれた感想を紹介する。

以下に各回毎の代表的な感想を紹介する。ここで紹介するのは抽出学生ではない。

第1回講義(4月13日)グループは3名を1組として固定のグループとする。

感想:来年教育実習に行くのに社会科の授業ができるのか心配になった。これからしっかり学んでいきたい。

第2回講義(4月20日)感想:社会科の授業ビデオを見て授業記録を取りました。子どもたちと社会科の授業ができるようになりたいと思った。

第3回講義(4月27日)感想:社会科の年間計画についてまとめたものを発表し合った。学校の周りに合わせて、特色ある生活科、社会科の授業が行えると子ども達に楽しい学習をさせることが出来ると感じた。

第4回講義(5月11日 実践的指導力に関するアンケート事前実施、ジグソー法練習 3・4年上で解説)※グループは9名の中から3名でつくる。

感想:教科書分析の方法を学習した。アクティブラーニングが重要視されてきていると様々な講義でも耳にしているが、実際にこの講義では体験できるので、自分の力を伸ばすために積極的に参加したいと思った。

第5回講義(5月18日ジグソー法:実質1回目 3・4年上の前半)※グループは9名の中から前回と違った3名でつくる。

感想:同じ単元を担当していても気づく観点や質問事項が増えたし、3単元で発表し合って、今までより詳しく授業の中身がみることができた。だからこそ、クロストークの時間で疑問点がたくさん出てきて、知識もいつもの倍以上得ることができたのに加え、もっと知りたいという気持ちも芽生えた。

第6回講義(5月25日ジグソー法:2回目 3・4年上の後半)※グループは9名の中で前回・前々回と違った3名でつくる。

感想:全ての単元において、調べ学習や体験学習が取り入れられていた。質問事項や予想を考え、実際に体験、インタビューをし、まとめをするという方法は、最も印象に残る良い学習方法だが、全ての単元で充実させて行うことは難しいので、重要視する単元を選ぶ必要があると思った。

第7回講義(5月30日ジグソー法:3回目 5年上の前半)※ジグソー活動のグループは縦のグループのメンバーから3名でつくる。

感想:エキスパートで調べた項目は身につくが、それ以外のものは、ジグソー法だけではたりないと感じた。自分で学習していかなければならないと思った。

第8回講義(6月1日ジグソー法:4回目 5年上の後半)※ジグソー活動のグループは縦のグループのメンバーから3名でつくる。

感想:今回は(ジグソー活動で)多くの質問事項が出たと思う。自己判断でいいものかどうか見極めるためにも、もう一度しっかりと指導要領を確認したいと思う。

<入試センター撮影。大学HPトップページにある「受験生ガイド」→教育学部→科目紹介に「社会科の指導法」で紹介>

第9回講義(6月8日ジグソー法:5回目 6年上の前半)※話し合いのグループは全体から3名グループをつくる。

感想:各々が考えた質問事項に「自分の考えを書くことで、授業の前にどのような準備をするべきか」、「どのような配慮が必要か」といったことが分かるようになってきた。現段階では自分の考えが正しいかは分からないが、試行錯誤し  て自分のやり方を身に付けたい。次回ジグソー法は最終回となる。

第10回講義(6月15日ジグソー法:6回目最終 6年下の後半)※話し合いのグループは全体から3名グループをつくる。

感想:最後の教科書分析をして今までで一番スムーズに学習を進めることができたと感じる。前に書いたワークシートと比べるとより学習が深くなっていることが分かった。教科書分析を忘れないように定期的にしていこうと感じている。

第11回講義(6月22日確認テスト(事後)、模擬授業と授業リフレクションの方法の解説、授業単元の選定、指導案検討のグループ構成(同じグループではない、3名)

感想:確認テストは前回よりも解けて良かったです。また、テストを行っている際に、この講義を通して“自ら学ぶ”ということがいかに習慣として身についたかを感じました。これからもっと身につけていきたいです。

第12回講義(6月29日:学習指導案略案の添削、グループ内での教え合い)

感想:実際に指導案を書いてみて、授業をする前に計画を立てておくことは大変だが、大切なことだと分かった。模擬授業をすることがとても不安だったが、事前にしっかりとした指導案を作成できれば授業ができると感じた。

2回目の確認テスト返却の感想:前回よりも点数は上がったものの、あいまいな知識がある。また、もっと社会的関心を高めていくために日頃から新聞などももっと見るよう習慣づけていきたい。

確認テスト(事後):小学校社会科に関する知識(72.3点) +17.3点  社会に関する関心(7.9点) +1.6点

第13回講義(7月6日模擬授業の練習、資料等の準備と確認)

感想:模擬授業を行い、もっと細かく流れや質問事項を決めておかなければならないということが分かった。想像と実際に行うのではまったく違うので良い経験になった。改善点をしっかりと次に活かせるようにしたい。

 第14回講義(7月13日模擬授業と授業リフレクション実施) 

感想:リエゾンゼミⅡ(ゼミ)で行った5学年の題材を直したくて、この授業でも指導案をしてみたが、「これでいい」はないと断言できるということが強く感じられた。こうやって教師は生涯学び続けるのだなと思った。よりよい指導案をつくりたい。

第15回講義(7月23日講義まとめ、実践的指導力に関するアンケート事後実施、授業評価)

学生による授業評価:講義を理解できたか。83%よくできた(4段階評価で) 講義の進み方:適切であった93% 

 

 

 

取り組みからの示唆

①3名を基本のメンバーとするグループ編成の考え方の長短

長所・・・一人では考えが深まらない。2名だと互いに一方通行になる。グループの人数は3名であることが望ましいと言われている。日本にも「三人寄れば文殊の知恵」といったことわざがある。二人では行き詰ってしまうことも三人であれば話し合いは互いに補完し合いつつ深まっていく。この講義を通してみても学生の様子からそのことが手に取るように分かったし、ミニットペーパーの記述にも頻繁にジグソー活動の効果について記載されていた。四人になれば2対2の関係が出てきてしまい、話を聞いて待っている時間も増えてしまう。その点3名であることはほどよい緊張感と話し合いの深まりを感じることができる良さがあると考える。

短所・・・今回受講生が3の倍数の63名であったため、開始当初はとても活動しやすかった。しかし、ジグソー活動は3名を組み合わせて活動するため、1名でも欠席者が出ると2名か4名でのグループが出てしまうことが何回かあった。3名であるがゆえの短所でもある。偶々2名や4名で活動せざるを得なかった学生にとっては不満もあったと推察されるが、学生の授業評価ではこのことに関する言及がなく、「とてもよく集中して学ぶことができた」といった意見が大半であった。次年度以降、この人数の調整については課題としたい。

②主体的に学ぶための次の手立て

社会科は教師にとっても子どもたちにとっても苦手な教科とされている。社会科は暗記教科だと思って教職課程に入ってくる学生がほとんどである。こうした学生を相手に、小学校の教育現場との連続性を考えて、「小学校の教科書」をテキストに分析を行うことを中心にしている。実際に学生が自ら行うことで「教えることを学んでいくこと」が重要であると考える。今後教育実習や教員として自律していく時には、自分からもっと意欲的に教材を探そうとする姿勢が求められる。それをどう育てるかが今後の課題であると感じる。

来年度の「社会科の指導法」において、修正を行う箇所は次の3点である。

①学生の意欲を引き出すために、事前学習の設定をする

 前年度3月にシラバスが公開されるので、4月の第1回講義では、「社会科の教材となるものを一つ見つけてくること」(例)書籍・パンフレット・地図・新聞・実物など、写真でもよい)一人2分以内の発表という事前課題を設定した。

②講義期間の途中で講義全体を振り返る機会を取る

 学期末の授業評価でしか、講義全体のことを知ることができない。そのため、講義期間の途中で振り返る機会を第3回と第10回目に設け、講義全体の感想や質問を受け付けるようにする。

③評価の表現の仕方を学生に分かりやすく提示する。

 学習指導案作成60%(指導案の項目に沿って書かれており、かつ、自分で収集した資料が含まれていること)

 レポート40% 内容:2つの項立てをして、自分の考えをまとめている (20%)

           表記:漢字・句読点・段落が正しく表記されている(20%)

   

リフレクション:

①確認テストの結果、A群(点数高い、関心高い)が圧倒的に増え、D群の学生(点数低い、関心低い)は0名となった。

②社会科授業づくりに関心を持つ学生が増えた。記述にも意欲的な表現が見られるようになった。

③学生の授業評価結果からも講義を理解して学ぶことができた学生が多いことが分かった。

 

 

 

 

資料・文献

・アロンソン,松山安雄訳(1986)『ジグソー学級:生徒と教師の心を開く協同学習法の教え方と学び方』

・三宅なほみ「協調的な学び」,渡部信一監修(2010)『「学び」の認知心理学事典』

・東京大学 大学発教育支援コンソーシアム推進機構 平成24年度報告書『協調が生む学びの多様性 第3集―子どもが変わる・先生が変わるー』

・東京大学 大学発教育支援コンソーシアム推進機構 平成25年度報告書『協調が生む学びの多様性 第4集ーわたしたちの現在地とこれからー』 

・松下佳代(2015)『ディ―プ・アクティブラーニング』

・三浦和美・渡部信一(2011)「学習管理システム(LMS)によるミニットペーパーの活用法」、渡部信一監修『高度情報化時代の「学び」と教育』東北大学出版会 P127~143

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