情報処理の実習形式の授業におけるビデオ教材の活用効果について

大久保麻実

個人サイト: http://ohkuboma.biz   動画サイト:  https://www.youtube.com/user/ohkuboma

明海大学 総合教育センター 特任講師 2003.4-2015.3, 東洋大学 社会学部 非常勤講師 2003-現在

京都大学高等教育研究開発推進センター 第3期 MOSTフェロー(2014年度) http://goo.gl/MZonIm http://goo.gl/RP1Xx7

Practical Computing Textbook (共著) http://amzn.to/16zuEpK

プロジェクトの動機

ExcelやPowerpointの実務レベルでの運用能力を身に着けさせることは重要ですが、

15回の授業で、

  • インターネットの利用
  • タッチタイピング
  • ファイル管理
  • すっきりとした美しい文書の作成
  • 実務レベルで役に立つExcelの技能
  • 効果的なプレゼンテーションの作成

を1クラス40~50名程度の実習で身に着けさせるという事は、時間および教員や補助者のヒューマンリソースの点から考えてなかなか困難です。

そこで、ビデオ教材を導入することにより、時間を節約し実習量を確保しました。
すると、同時に実習の質を上げることができ、また、学習者の学習に対する主体性が増したと感じられましたが、これが、事実であるかについて検証を試みます。


プロジェクトの目的

以下の手法について、効果や影響を明確にする

  • 教員は課題の作成方法をあらかじめビデオに撮り YOUTUBE にアップロード
  • 授業中および課外に学生はビデオを見ながら実習し、期限までに、LMS manabaに課題をアップロード 
  • 期限内に提出された課題について、教員は仮採点を行う。採点結果は、LMS manaba の個々人のポートフォリオに反映
  • 授業中、教員は課題の目的・実習の概要説明、および、質問応答、採点済み課題の再提出のための助言を行う
  • 学生は助言を受けた課題について、最終期限までに再提出を行うことができる。減点なし。
  • 教育の成果の確認は、テストおよび課題で行う


検証の方法

  • 課題の採点結果
  • 試験結果
  • 最終成績
  • アンケートの結果

コースの基本情報

対象

実施時期 必修・選択必修 授業名 対象 受講者数 クラス数
 前期 必修 情報リテラシー 東洋大学社会学部(主に)1年生 131 名 3 クラス

内容

実施時期 授業名 内容
前期 情報リテラシー

Word, Excel, Powerpoint, INTERNET, LMS(manaba) を使用して、大学での学習やビジネスの現場に対応できる能力を身につけさせる授業

教授法にビデオ教材(http://www.youtube.com/user/ohkuboma)を開発・使用
課題の評価にLMSmanabaを使用
タッチタイピングの技術習得過程の評価にに学生相互評価を導入
 

評価方法

実施時期 授業名 対象
前期 情報リテラシー 課題 40点
タッチタイピング 15点
実技試験 15点
(Excel で作った表とグラフをワードに貼り付け、計算結果から数値を読み取って報告書を完成させる試験)
総合評価点 10点 

授業の内容

 

授業内容(リンクあり)

第1週 

 ガイダンス
  • 講義の目的・内容・評価方法の説明
  • 整理番号の通知書の配布
  • 授業開始時におけるPCに関する技能や意識についてのアンケートの実施

第2週

タッチタイピングスキルの相互評価、および、タイプの練習の方法について解説・実習

相互評価導入の目的:

  • 評価基準を浸透させる
  • 習得できるかどうかの不安の共有と、互いに励ましあうチャンスを設ける
  • 本番試験直前になって練習を始める学生を減らし早期から練習に取り組ませる。 
  • 全体の練習の進み具合を確認 

第3週

 日本語入力とファイル管理について実習

ローマ字の学習, 語の入力, 文節変換, ファイルの保存・別名で保存, フォルダの作成, ファイルのコピーや移動, ファイルの連結

第4週

インターネットとWebメール

  • LMS や Webメールの利用方法
  • インターネット事情や利用上の注意など

第5週

Word 文書作成 (1)

第6週 

 Word 文書作成 (2)

第7週

 Excel (1) 作表

第8週

 Excel (2) 計算

第9週

  Excel (3) グラフ作成

第10週

  Excel (4) 関数

第11週

  Excel (5) 集計

第12週

  • タイピングテスト
  • Excel & Word
    集計word と Excel を用いた 報告書作成

第13週

Powerpoint (1)

第14週

 報告書作成試験(Excel & Word)

第15週

 Powerpoint (2)

  • スライドショーの作成


特徴的な実践1:
オリジナルのYOUTUBE 動画

詳細は →

特徴的な実践2:
タッチタイピング相互チェック

 

詳細は →

特徴的な実践3:
manaba(LMS)
を利用した学習管理

詳細は →

成績評価から見た授業

最終試験の成績

総合成績

  • 身に着けた技術を問う最終試験では、全体の75%程度の学生が、80点以上の成績を収めている。
  • 課題、他の試験を総合した成績では、全体の60%以上が A以上、全体の80%以上が B以上の評価を獲得している。
  • 出席要件を満たす学生の96%以上が単位を取得している。

詳細は →

アンケート結果から見た授業

授業時間外の学習について

負担の度合いと向上の度合い

アプリケーションソフトについて

自由記述から(抜粋)

授業全般について

  • こんなに短期間でパソコンの技術が向上するとは思っていなかったのでとても嬉しいです。ご指導ありがとうございました!
  • 私は授業を受けるまではパソコンで文字を打つこと以外にできることがありませんでした。授業を通して暗算ではなくパソコンの機能で計算できるようになったり、そこからグラフを作成したり、パワーポイントでアニメーションをつけたりすることができるようになりました。タイピングも指を見らずに打てるようになりました。
  • 私は、苦手な部分が多かった分、とても成長できたのではないかと思います。ありがとうございました。

VIDEO教材について

  • グラフの作成も難しいと勝手に思い込んでいましたが、ビデオを見た上でやってみると簡単で、一人でもできるようになりました。
  • 特にピボットテーブルを使った集計や、パワーポイントでのマスタースライドを使うことは初めてだったので、ビデオを繰り返し見て使い方を習得できるように努力しました。
  • 以前はエクセルがいまいち分からずなんとなく授業を受けていましたが先生のビデオがわかりやすかったのと自分のペースで授業できるのでビデオ等見なくてもエクセルで表を自分の力で作れるようになりました。
  • 先生が作ってくれたyoutubeの動画が分かりやすくてとてもよかったです。分からないところがあっても目に見えて分かるように動画を通じて指導して頂いたのでスムーズに課題に取り組めました。
  • わたしは、パソコンがすごく下手で授業内だけだと課題が終わらないことが多かったので授業の空き時間などに大学の開放してあるパソコン室や家のパソコンで課題をすすめました。やり方がぜんぜんわからなくてもビデオがあったので時間はかかったけどきちんとできました

詳細は →

すべての学生の自由記述

SA 森 あやさんのレビュー

森さんは、現在 東洋大学 社会学部 メディアコミュニケーション学科 4年の学生さんで、今回 1年間30回の講義のSAとして、授業の補助業務に携わってくださいました。
2011年度の1年生の時に同じ科目を大久保担当のクラスで受講した経験があり、ビデオ教材のある授業と無い授業を知っている人が、補助者として見た1年間の教室の様子をレポートしてくださいとレビューの執筆をお願いしました。

スキルチェックについて

タイピングやファイルの保存などの基本的操作が授業開始時には上手くできない学生が多くいた。
スキルチェックという明確な目標を設定することで、空き時間を使ってタイピング練習をするなど、各々がスキルチェックに向け努力し、技術向上につながった。
また、授業初期にこれらの技術を身につけることで後の作業速度の向上にもつながっていると感じた。

教室の雰囲気について

授業回数を重ねるにつれ、学生同士で教え合ったり、相談したりしながら課題を進めているのが印象的であった。
お互いに作成した課題を見せ合い、間違えがないかなどを確認している姿も多く見られ、学生自身が考え、理解しながら課題に取り組んでいる様子が窺えた。

ビデオ教材について

ビデオ教材は一つ一つ丁寧に順を追って操作方法が説明されているため、初心者でも理解しやすい内容となっている。
学生は自分の作業速度に合わせ、ビデオを再生、一時停止しながら課題を進め、一度で理解できなかった内容は繰り返し再生し、理解しようと努めていた。
授業中、その回の課題が早く終わり、次の課題や応用編のビデオを見て事前学習している学生も見られ、個人学習にもビデオ教材が役立っていると感じた。

ビデオ教材導入以前と比較して感じたビデオ教材の利点

ビデオ教材の利点は、作業画面とビデオを一画面に同時に表示させながら作業を行うことができることである。
一画面に同時表示させることで視点の移動が少なくなり、ビデオの進行と自己の作業状況を即座に見比べることができる。また、アイコンやセルなどの位置関係を把握しやすいという点もあげられる。

2015年2月19日 東洋大学 社会学部 4年 森あや

まとめ

ビデオ教材を利用した講義は、通常の授業方法より細かく複雑で、時間がかかる作業を含む実習を可能にし、繰り返し好きな場所で見られるため、各自に会った勉強、時間場所を選択可能にし、実習を行うことを可能にしている。 アンケート結果や試験結果からこの仕組みがうまく機能し、成果を上げていることがうかがえる。

また、LMSを用いた課題採点システムで進行管理を行うことにより、脱落者を減らし、講義のペースを維持する効果があると思われる。また、仮採点・再提出の仕組みを取り入れることにより、教員と学生のコミュニケーションを維持し、学生自身が気づきにくい誤りについて話し合うきっかけをつくることができたと思う。

タッチタイピングの相互評価については、練習の経緯を可視化する効果のほかに、学生が、授業のはじめに周りの学生と話すことによりリラックスし、その後の実習でもうまく助け合える効果があったように見受けられた。また、課外の練習のモチベーション維持としても、役立っているように思われる。

講義全体を通して、学生はよく努力し、成果を上げたと思う。

検証の目的とした以下の点については、

      • 授業の成果は上がっているか(目標が達成できているか)
        • 身に着けた技術を問う実技試験では、全体の75%程度の学生が、80点以上の成績を収めている。
        • 課題、他の試験を総合した成績では、全体の60%以上が A以上、全体の80%以上が B以上の評価を獲得している。
        • 出席要件を満たす学生の96%以上が単位を取得している。
          以上のことから、ビデオ教材を用いた授業においても、所定の目的は達成できていると考える。
      • 必要に応じて授業の前後の時間を活用して取り組んでいるか
        • 5時間以上 0.9%
        • 4時間以上 5時間未満 3.7%
        • 3時間以上4時間未満 4.6%
        • 2時間以上3時間未満 23.9%
        • 1時間以上2時間未満 44.0%
        • 1時間未満 20.2%
        • 課外学習時間はとっていない 2.8%

          以上の結果から、ベースとなるスキルの異なる学生が、各自が必要に応じて課外学習時間を取っていることがわかる。
      • 学生に適切と考えられる以上の負荷がかかっていないか
        • 課外学習時間を見ると、一回の授業の予習復習に充てる課外学習時間が、0~3時間までの学生が、全体の70%を占めている。これについては、適度な負荷のかかっている状態と考える
        • 感じている負荷の度合いについて、「難しいと思うことがあったが何とかやりぬいた」と解答する学生が最も多く63%を占め、学生の負荷の軽減については、様々な角度から検討していく必要がある。
      • さらに工夫が必要であるとすればどんな点か
        • 圧縮整理が可能な教材については、よりコンパクトに仕上げる 課題11
        • 流れがわかりにくい教材についても整理する。課題9
        • 学生の学習に対するモティベーションを維持するための工夫を継続する。

この授業のその後

この授業の受講生の 91%が、同時限帯に開講するWeb情報処理および実習Ⅰの授業を受講しました。(前期のはじめに履修登録済み)

そこで、後期開始時に、ここに掲載している前期最終回に行ったアンケート結果や成績の集計結果を公表したところ、以下のような感想がありました。
(代表的な意見をまとめたもの)

前期アンケート結果を見た感想

  • 成績がどのようにつけれられたか知ることができてよかった。
    自分の成績が良かったのは、(あるいは、悪かった)のは、どこがどうだったからからとわかってよかった。
  • アンケートの結果をまとめて見せてくれてありがとう。
    自分が課外に実習時間をとっていたのは、自分ができないからだと思っていたが、他の人も取っていることがわかり安心した。みんなそうだったんだ。
  • なんか、自分は相当できるようになったんじゃないかという気がしていたが、他の人もそういっているので、この感じは本当なんだ、やった!と改めて思った。
  • 自分は後期からの参加なのだが、力の付く授業だったみたい。楽しみなので、後期の授業で自分も頑張ってみる。

また、後期終了時には各自が自分のオリジナルサイトを制作・公開し全体として一つの観光ポータルを作り上げました。図は、学生の作品をまとめたポータルトップページです。ページデザインは、3年前の受講生でSAの森あやさんが担当しました。(詳しくはWeb情報処理及び実習Ⅰのポートフォリオで)

後期終了時の成果物

個々の学生が作成したサイトにリンクを張ってまとめたページ。タイトルも公募で決定。ページデザインは4年前の受講生の SA 森あやさんが担当

参考文献

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