大阪工業大学での携帯電話(C-Learningシステム)を利用した授業アンケート実施事例

浦田 直樹  大阪工業大学 教務部教務課

 OMR用紙などの紙媒体で実施する授業アンケートは、集計作業に時間とコストがかかり、アンケート実施から約2カ月後にようやく結果を教員や学生にフィードバックするという状況でした。これでは、教員が授業改善を行うタイミングやサイクルが遅くなり、回答した学生がその改善の恩恵を受けることができない、という問題に直面します。この解決策として、大阪工業大学では2011年度前期の授業科目から、携帯電話を利用した授業アンケートシステム(㈱ディスコが提供するC-Learningシステム<開発元は㈱ネットマン>)を導入し、全学一斉に実施しました。教員・学生が当該システムを利用し、授業アンケート実施から集計、フィードバック、授業改善というPDCAサイクルを迅速化しました。学生数約8,000名、講義科目数約3,000の規模で行った事例として、導入までの道程、実施方法、今後の課題をご紹介します。

キーワード:携帯電話、スマートフォン、授業アンケート、PDCAサイクルの迅速化、集計作業の軽減、C-Learningシステム

大阪工業大学FD NEWS

取り組みの背景

 大阪工業大学は、2010年度まではOMR回答用紙を利用した授業アンケートを全学的に実施していました。しかし、紙媒体で実施する授業アンケートには、次の問題がありました。

1.OMRによる集計(6万枚を超える読み込み作業、マークエラー修正作業)に長時間を要する。

2.集計後に行う、授業担当者・学生へのフィードバックが数ヵ月後になる。

3.速やかな授業改善に役立てることができない。

4.学科へのフィードバック内容が限定される。(自由記述欄など)

5.紙媒体実施であっても、数百万円の経費を要する。

 大阪工業大学FD委員会では、これら多くの問題点を解決し、学生からの鮮度の高い意見を迅速に授業改善に反映させたいとの思いで、次世代の授業アンケートの実施方法を模索していました。また、回答方式(記名、無記名)なども学部・学科によって統一されておらず、大学全体で足並みを揃えるべき、という意見もありました。

 約半年かけてFD委員会や各学部教務関係会議において検討重ね、「2011年度前期から実施する授業アンケートについては、全学的に無記名式で統一し、かつ携帯電話で実施する方法として㈱ディスコが提供している(開発元は㈱ネットマン)C-Learningシステム(以下C-Learning)を導入し運用する。」と決定しました。

取り組みの位置づけ

 大阪工業大学では、開講している全科目(約3,000科目)を対象に、授業アンケートを毎期実施しています。

 授業アンケートは、専任・非常勤教員(約700名)、学部学生・大学院生(約8,000名)を問わず、全ての所属教員・学生が関わります。授業改善に必要な学生の意見を収集する役目を担う授業アンケートは、本学のFD活動において重要な位置づけとなっています。

システム導入のメリットとその特長

 C-Learningは、「出欠管理」、「アンケート」、「小テスト」、「掲示板」などをはじめとする、携帯電話やスマートフォンを利用して授業の運営を支援するICTツールです。大阪工業大学は、このシステムのアンケート機能のみを利用契約し、大学当局が実施する授業アンケートを学生が持つ携帯電話を利用して実施しました。

 導入するメリットと特長はつぎのとおりです。

【授業アンケートの集計とフィードバックについて】

1.学生は学生個人が所有する携帯電話で、C-Learningにアクセスし設定された授業アンケートに回答し、その内容はリアルタイムで自動集計される。(=集計時間の短縮化)

2.教員はパソコンから学内LANを経由し、C-Learningにアクセスし、リアルタイムで集計結果(自由記述欄含む)が確認できる。確認後、学生へのコメントを入力する。(=教員への迅速なフィードバック

3.教員が入力したコメントと集計結果を学生は閲覧することができる。(=学生への迅速なフィードバック)

【授業運営支援ツールとしての機能について】

 大学当局が実施する授業アンケート機能以外に、教員が任意のアンケートを設定することが可能である。この機能を利用して、授業支援のICTとして、ミニッツペーパーやクリカーと同様の活用をしたりすることが授業運営に有効なツールとなる。

【システム全般について】

 汎用性のあるユーザーの意見や要望はシステム改善に採用されるため、カスタマナイズに必要な経費が節減できる。採用されたシステム改善は、2週間ごとにリリースされるので、導入後に発生した問題点を概ね解決することができる。

【アップロード(作成する)データについて】

 C-Learningにアップロードするデータは、基幹システム(教務システム)から出力・変換し、簡単に作成できる。データの種類は次のとおり。

1.教員情報:教員ログインID、パスワード、氏名など

2.講義情報:教員ログインID、講義コード、講義名、期、曜日、時限など

3.学生情報:学生ログインID、パスワード、氏名、学校、学籍番号、学部・学科など

4.学生履修情報:講義コード、学生ログインID

5.共同講義情報:講義コード、教員ログインID

取り組みの内容とスケジュール

年 月 内          容

2010.10

授業アンケートの実施方法を携帯電話実施できないか検討をはじめる(複数のシステムを検討)

2011.01

学長へ提案、システム選定としてC-Learning採用決定

2011.03

 

携帯電話を利用した授業アンケートシステムの導入と実施をFD委員会で審議決定

 ㈱ディスコとシステム関係(開発、設定、データ等)の打合せを実施(これ以降、約1年間継続的に打合せを実施)

2011.06

 

 

教員向け説明会を計5回実施「携帯電話を利用した授業アンケート実施に係る説明会」 (大宮キャンパス3回、枚方キャンパス2回)

 

授業担当教員に授業アンケートの実施を依頼

学生には掲示、ポータルサイト、メール等で携帯電話で授業アンケートを実施する旨を周知

2011.07

 

前期については授業13・14回目で授業アンケート実施、コメント入力後15回目で学生にフィードバック(選択式設問11問と自由記述1問)

 

2011.10

2012.01

後期については、中間と期末の2回授業アンケートを実施した。

1.中間アンケート:授業回数7・8回目に実施し、9回目に学生にフィードバック(設問は自由記述2問のみ、「これまでの授業においてよかった点」「今後の授業において改善して欲しい点」)

2.期末アンケート:授業回数13・14回目に実施し、15回目に学生にフィードバック(選択式設問11問と自由記述1問)

授業アンケートの実施結果と回収率

 授業アンケートへの回答率は、OMR(マークシート)用紙方式に比べ、携帯電話方式の方が低下した。(表は学部のみ)

年度

実施方法

 

前期(期末)

後期(中間)

後期(期末)

2010年度

OMR用紙

科 目 数

 1,197

-

 1,200

履修者数

83,737

-

73,208

回答者数

59,618

-

48,060

回答率(%)

    71.2 %

-

    65.7 %

2011年度

携帯電話

科 目 数

 1,352

 1,329

 1,328

履修者数

79,840

69,125

69,125

回答者数

50,902

32,160

28,337

回答率(%)

    63.8 %

    46.5 %

    41.0 %

 2012年度前期の授業アンケート(中間)において、学生への協力メールを配信した結果、回収率は67.8%となった。<科目数:1,405、回答者数:53,096、履修者数:78,354>

2011年度末に教員対象に行った「C-Learning」に関するアンケートの結果(抜粋)

1.肯定的意見

・携帯によるアンケートになってからすぐに学生の意見や感想が聞けるので、非常に良い。面倒なのか回答しない学生がいるという問題もあるが、折角導入したシステムなのだから、当面は続けていくべきだと思う。アンケートだけでなく授業のツールとしても有効利用していきたい。

・経費的な面や回答率の点で多少の問題はあるかもしれませんが、半年後に結果が出てくるマークシート方式に比べて即結果がわかるこのシステムの長所はかなり大きいです。おかげで自由記述で書かれていた意見に最終回の授業で答えることができました。

・とくに後期中間に行ったアンケートは効果大でした。その時に履修学生からあった指摘事項を後半の授業で改善したところ、後期末アンケートでは(おそらく当該学生から)「中間で要望した点を改善していただきました」とコメントされていました。学生からの真摯な意見をオンタイムで汲み上げられるのは、C-Learning システムの機動性に依るところであり、従来の紙ベースのアンケートでは極めて難しいでしょう。

2.否定的意見

・C-Lerningを使わなくても,これまでも頻繁に授業中に直接口頭等で意見を聴いているので、わざわざネットを介するという行為にコミュニケーションの希薄さを感じてしまいます。

・携帯電話でアンケート回答させるとこちらは画面をのぞきこむわけにはいかず、操作しているフリをして回答していない学生が多数いるようでした。OCR用紙を配布していた時はほとんどの学生が回答していました。実際、紙媒体で提出していた年と比べて回答率が非常に低くなったと思います。

現時点でのまとめと課題

 学生の意見をリアルタイムで掌握できる点が最大のメリット。特に、中間アンケートの意見を当該期の授業に活かせる点は、ステークホルダーである受講生に向けた速やかな授業改善が可能で、授業改善のPDCAサイクルを早められる。

 浮上している課題としては、授業アンケート回答率向上、学生が負担するパケット通信料、教員が任意で設定できるアンケートの利用率などがある。システム改善(未回答学生への督促メール機能追加)や教員マニュアル改善と説明会の実施継続などを行い、これらの問題に対処したい。

取り組みの視点

1. 授業改善における授業アンケートの役割や有効性についてご教示願いたい。

2. 授業内で携帯電話を利用することに関する、教員・学生双方の率直なご意見を伺いたい。

, and others from {0} s Recieved {1} MOSTAR{2} {0} ! added this to Mo-susume.