京都大学のプレFD 2010

半澤礼之

京都大学高等教育研究開発推進センター・FD研究検討委員会WG2

プレFDとは大学教員のキャリアに向けて大学院生(主に博士課程学生,ポスドクも含む)を準備させる活動であり,京都大学では「文学研究科プレFDプロジェクト」「大学院生のための教育実践講座」「サイエンス・コミュニケータープロジェクト」の3つのプレFD活動を行っている。文学研究科プレFDは文学研究科のOD・PDによるリレー講義と授業検討会,事後研修会からなり,大学院生のための教育実践講座はBasicコースとAdvancedコースからなる1日の研修会である。そしてサイエンスコミュニケーターは,京都大学で学位を取得した若手研究者による小学校中学校,高校への出前授業となっている。いずれも参加者の教育に対する視点の拡大やスキルの取得といった効果をあげている。

京都大学高等教育研究開発推進センター

文学研究科プレFDプロジェクト

【取り組みの概要】

  • 2009年度より開始された、文学研究科とFD研究検討委員会が共同で主催する文学研究科のオーバードクター(OD)によるリレー講義形式のゼミナールである。このプロジェクトは、オーバードクター支援(非常勤講師としての任用、学内設備の利用等)をきっかけとして、文学研究科の発案によって開始された。毎年10名~15名程度のODが参加している。
  • 授業開始前に事前研修をおこない(2011年度より開始)、その後、全ての授業を公開とし、毎回の授業終了後20分程度の授業検討会を行う。一人の講師は2回から5回の授業を行い、自分の授業が無い時には他の講師の授業を参観、検討会への参加という形でゼミナールに参加する。
  • 半期の授業が全て終了した段階で事後研修会を行い、自分自身の教育活動を振り返る作業を行う。本プロジェクトで行った授業検討会や事後研修会は、このリフレクションを促すための作業に大きな力点がおかれている。
  • このリレー講義自体をODを対象とする「大学教員になるための教育実習の場」と位置づけたいという文学研究科の意向を受けて、高等教育研究開発推進センターで研修のための場の設定や、研修プログラム・ツール(教授デザインのためのワークシート等)の開発などを行った。

【授業者のリフレクションを促すための仕掛け】

 リフレクションシート(学生用、参観者用)

  • 授業内容についての記入欄と、授業方法についての記入欄の2つの記入欄からなるもので、授業後の検討会でその内容が紹介されている。

授業後の検討会

  • 授業者と参観者によって、授業後20分~60分程度行われ、その内容はMLによって本プロジェクトの全参加者に報告されている。

自分の授業ビデオの視聴

  • 教授デザインのためのワークシート作成のため、自分の授業を録画したビデオを視聴することが必要となる。
  • 事後研修会では、他のODの授業の様子を知るために、全てのプロジェクト参加者の授業のダイジェストが紹介されている。

受講生に対するインタビュー結果のフィードバック

  • 学習者の多様性の理解から自分の授業をフィードバックしてもらうために、高等教育研究開発推進センターのスタッフが本プロジェクトのリレー講義を受講した学生にインタビューを行い、その内容が事後研修会で紹介されている。

教授デザイン用ワークシート

  • 授業を構成する要素の多様性を理解し、自分の授業をデザインしたり振り返ったりするためのワークシートの開発と改訂、実施が行われている。

【本プロジェクトの成果と今後の展望】

 

  • 参加者(13名)の満足度は全体的に高いという結果であった。
  • 授業後の検討会や事後研修会によるOD同士のネットワークの形成が見られた。
  • ファシリテーターである文学研究科の教員の意識に変化が見られた。

今後の展望

  • 本プロジェクトは「京都大学のODが京都大学の学生を教える」という特徴を持っているため、教育実習の場としては十分ではないという声がODから寄せられている。この問題にどのように対応していくのかについて考える必要がある。
  • 教育に対する意識の変化や、自分の授業のリフレクションだけに留まらない、「授業を行う上でのコツやノウハウ」を求めるODの声も少なからず存在する。この声に対してどのように応えていくのかについて、高等教育研究開発推進センターの方針として考えていく必要がある。

大学院生のための教育実践講座

【取り組みの概要】

  • 「大学院生のための教育実践講座」は、大学教員を目指す京都大学の大学院生を対象にして、一日かけて行われる講座である。平成17年度に第1回が実施されて以来、毎年開催され、2011年度で第7回目となる。教員として授業を担当するための自覚を促し、現在の大学教育における課題を共有することがこの講座の1つの大きな目的である。
  • 本講座には、BasicコースとAdvancedコースの2つのコースがある。Basicでは、将来、大学で教授職につくことを希望する大学院生を対象とし、Advancedでは、昨年度までに本講座を受講した経験のある大学院生、あるいは非常勤講師などで大学において授業担当経験のあるものを対象とした。
  • 例年、Basicコースで20~40名程度,Advancedコースで10名程度の参加者となっている。参加者には京都大学総長の名前で修了証が発行される。

【プログラムの構成】

Basicコース

  • 「大学授業の現在」「大学授業の課題」「大学で教えるために」といったテーマで行われる、担当教員によるミニ講義で、現在の大学教育がおかれた状況や課題を学ぶ。
  • グループ討論ボディーワークなどを通して、自身が大学の授業を受けてきた経験を振り返りつつ、大学で教えることがどのような課題を抱えているのかを考える。グループ討論のテーマとしては「大学の授業をどう思うか」「大学の授業で教師に求められるもの」といったものがあげられる。

Advancedコース

  • 具体的に大学の授業を構成する際に生じる課題を共有するために、参加者による模擬公開授業を実施し、それについてディスカッションをを行うことをプログラムの中心とする。


【本講座の成果と今後の展望】

満足度および有意義度の推移(Basicコースのみ)


 

  • 満足度は全体的に高い値で推移している(advancedコースも同様)。
  • 本講座を通じた院生ネットワークの形成が見られ、院生やOD、PDのグループによる自主的な教育活動に関する勉強会が開催されるようになった。

今後の展望

  • 他大学の学生がオブザーバーとして参加したり、既に教員として教育活動に従事している若い研究者が参加したりと、参加者が多様になっていることが近年の特徴としてあげられる。2011年度は、関西地区FD連絡協議会「初任教員向けプログラム」の1つにもなっており、学外からの参加者の増加が見込まれる。このような参加者の多様化に対してどのように対応していくのか検討する必要がある。


サイエンスコミュニケータープロジェクト

【取り組みの概要】

  • 京都大学で博士号を取得した若手研究者(研究員など、パーマネントの職を得ていない者が中心)を対象としたプロジェクト。若手研究者は、自身の研究テーマをもとに提供できる授業テーマを考え、全国各地の小学校や中学校、高校に募集を行う。そして、各学校での出前授業や京都大学を訪れた生徒に対するオープン授業を行う
  • 若手研究者にとって、自分自身の研究内容について専門家以外の聴き手を対象に話す機会は限られている。出前授業では、聴き手の知識を考慮し、研究の意義や面白さを伝えるために様々な工夫を行うことが必要となる。本プロジェクトは、研究の意義や重要性を他者に伝える作業、自分自身の授業のあり方についてふり返る作業を通して、若手研究者が伝える力や企画力、共感力を磨くことを目指すものである。
  • 2011年度は16名の若手研究者が参加し、全国の46の小学校・中学校・高校に対して出前授業またはオープン授業を実施した。彼らは、本プロジェクトの全てのプログラムに参加することにより、修了証が授与された。

【研修プログラム】

6月:オリエンテーション

  • 本事業の目的や参加にあたっての心構え、留意点など

7月:事前研修

  • 「学校での立ち振る舞い、マナー」「子ども達の学びを促すには」をテーマとしたミニ講義
  • 参加者による模擬授業と、ディスカッション

9月~11月:出前授業・オープン授業期間

11月:実施報告会

  • 参加者からの報告とディスカッション
  • 高等教育研究開発推進センタースタッフからのコメント

【本プロジェクトの成果と今後の展望】

子ども達からの評価「またこのような授業をうけたいと思う(%)」

*小学生671名,中学生1106名,高校生2030名による評価

若手研究者の変化:授業能力に対する自己認識

*事前・事後で同様のアンケートを行い、変化を示した。

【事前・事後アンケート項目】
1.児童・生徒が学習課題を解くことができないとき、自分はその課題のレベルが彼らに合っているかどうか的確に判断できる
2.自分が本気になってあたれば非常に難しいと思われる児童・生徒でも指導できる
3.授業中に児童・生徒が騒いだり、授業の妨害をしたとき、自分は素早く効果的に対応ができる
4.自分は児童・生徒の学業に関するいかなる問題にも対処できるような研修、訓練、経験等を積んでいる
5.学習課題が児童・生徒にとって難しいと思われたとき、常に自分は彼らのレベルにあった課題に切り替えることができる
6.自分が一生懸命やれば、非常に難しい児童・生徒でも,あるいは「やる気」のない者でも指導できる

  • 子ども達の出前授業・オープン授業に対する評価は全体的に高い。
  • 本プロジェクトに参加した若手研究者の教育に対する意識に変化が見られた。

今後の展望

  • 本プロジェクトを運営するための予算獲得が重要となる。

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